ノラネコの呑んで観るシネマ

東京2020オリンピック SIDE:Bのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

東京2020オリンピック SIDE:B(2022年製作の映画)
4.4
SAIDE:Aは人間ドラマとしての五輪だったが、今回描かれるのは“時代”。
おじさんしかいないコロナ延期の決定会議から始まって、本来の開催年の一年前、2019年から21年までの時代の情景。
なるほど、確かに二本の映画があって、初めてあの五輪の全貌が見えてくる。
しかしここでの河瀬直美は、時代の傍観者に徹し、SIDE:Aで見られたような、明らかな感情移入は見られない。
「確かなのは人間の感情だけ。それには向き合わないと」という森山未來の言葉通り、五輪を推進する人と反対する人、正反対の感情が入り乱れるカオスな状況、何が正しいのかも分からない時代を、淡々と描いてゆく。
アスリートや関係者、森喜朗やバッハさえも、可能な限り中立的に描写されているのだ。
もっとも、SIDE:Aとは対照的に、映像に自分の声を多数入れ込むことで、河瀬直美の見た時代であるとの作者署名としている。
しかし日本の現場の人って、やっぱり優秀なんだな。
絶対無理って状況でも、現場が頑張って何とかしちゃう。
だから逆に、上の方がダメダメなままになっちゃうんだけど。
非常に印象的なのが、総合演出を辞任した野村萬斎の、超辛辣なダメ出しの言葉で、アレを佐々木宏の就任会見の前に入れたのは、本作で唯一の作者の共感と悪意を感じる。
ぶっちゃけ、この描写で映画の冷遇が決まったんじゃないかと。
SIDE:Aとは真逆のアプローチだが、こちらも観応えは十分だ。
ブログ記事:
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