HicK

長ぐつをはいたネコと9つの命のHicKのレビュー・感想・評価

4.3
《身近なテーマを秘めた素晴らしいアドベンチャー&コメディー作》

【面白い】
なんで今になってこのスピンオフ作品の続編が作られるのか疑問だったけど、とてもよく出来てた。アクションの量はたぶん過去1だし、コメディーも笑える。アドベンチャー要素も強く、個性豊かなキャラクターたちも多数登場。そして、ちょっと考えさせられるテーマやメタファーも織り込まれ、とても充実した内容だった。

それにしてもドリームワークスのオープニングロゴ、カッコよくなったなぁ。

【良いテーマ】
『本当に欲するものは願わずともすぐそばにある』というテーマ。良かった。そして、老いたネコが人生の価値を見つける物語でもある。所々で感動。

【老いたネコ】
若い頃は9個も命があると思って無茶をして楽しかったのに。いつの間にかひとつずつ減ってく。"若かりし頃"はどんどん英雄化され、"死"の存在はどんどん身近になっていく。…人間と一緒。

【ネコを追いかけるウルフ】
"ある意味"が込められたウルフというキャラクターは、従来のファミリーエンタメの枠を超えるような存在。感心してしまった。彼を通して、ネコが自身の"壁"を乗り越える姿が(文字通り)目視できた。ウルフの「俺はメタファーでは無い」ってセリフは、スタジオ側の照れ隠しともとれたり。

【ネコと正反対のワンコ】
ネコ映画なのにイヌの良さが全面に。つらい過去がありながらも、純粋すぎてちょっとウルッとする。最初から"正解"がここに。

【クマの家族】
「願い」が生み出す矛盾『みんなの願いは同時に叶わない』的な切なさ。でもやっぱり『願わずともすぐそばに大切なものが』っていう結び。良い。彼らによってネコのゴールも更にくっきりした。

【コメディー】
おとぎ話アイテムコレクター兼悪役のビッグジャックが面白い。久しぶりにシュレックシリーズの"ディズニーこけ下ろしコメディー"が見れた。ジミニー・クリケット、最高。見覚えあるアイテムが次々と出てくるのでワクワクした。

【演出】
3Dデザインはディテールを詰めたリアル路線では無く、アニメチックな方向へ舵を切ったアート路線に。「スパイダーバース」の影響が見られ、実写に近づけるよりも個性が出てる。ただ、個人的にはネコの"ウル目"は実写感があった方が好き。あと、アクションでフレームレートを極端に落とす演出もそんなに好みじゃないかも。

ちなみに日本語声優に関して、「シュレック5」もネコ役は竹中直人から山本耕史に変更になるってことかな?

【総括】
このシリアスなテーマ性でよく暗くならなかったなぁと思う。「深さ」「身近さ」を秘めながら、楽しいアドベンチャーとシュレック系統のコメディーが爆発してる素晴らしい作品だった。

「シュレック5」へ弾みがついた。同等のものを期待してしまう。ハードル爆上がり。
HicK

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