マヒロ

長ぐつをはいたネコと9つの命のマヒロのレビュー・感想・評価

4.5
“長靴をはいたネコ”ことプスは、無茶な冒険を繰り返しては命を落としていたが、猫ならではの九つの命により何度も蘇っていた。しかし、気付けばいよいよ残りの命は後一つとなり、焦ったプスはどんな願い事も叶えるという“願い星”により九つの命を取り戻そうとする……というお話。

『シュレック』シリーズのスピンオフである『長靴をはいたネコ』の2作目。『シュレック』は確か3くらいまで観てるがあんまり覚えてなくて、前作も観てない状態だったがほとんど問題なかった。
『スパイダーバース』や『ミュータント・タートルズ』なんかでも印象的だった手書き風CGアニメで、戦闘シーンではあえてコマ落としっぽい映像にしてキメの画を強調したりと、ローテクを巧みに取り入れてアニメならではの格好良い画を見せてくれる。
基本キザに決めてるプスだが、ビビってイカ耳になったり何かを飲む時は舌ですくって飲んだりとか、挙動の端々に猫っぽさが垣間見えるのも良いところで、猫飼いとしてはそこら辺の挙動の細かさだけでも加点したくなっちゃう。

プスだけでなく、彼とただならぬ関係にあるネコのキティ、同じく願い星を狙う敵としては、熊一家と人間の女の子・ゴルディのチーム、クッキー工場の御曹司で私利私欲に塗れたジャック・ホーナー率いるシェフ集団と様々なキャラクターが出てくるが、皆ちょっとひねくれつつも憎めないところがあって、不器用な感じで好きになれる。変わり種として、色々あってプスに着いてくることになった他者を疑うことを知らない捨て犬のワンコと、プスの命を狙う神出鬼没の謎の狼がいるが、この2匹は善悪の極地にいるような形で、複雑な事情を抱えた他のキャラクターとは違うシンプルな性質で、このピュアな存在が物語を掻き回していくというのが面白い。

映像の美しさ、キャラクターの良さ、テンポよく挟まれるギャグ、そしてシンプルながら生きることについて考えさせられるような物語など、様々な面で高水準な作品だと思った。2023年のアニメ映画では個人的には一番だった。

(2023.165)
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