こなつ

別れる決心のこなつのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
3.8
パク・チャヌク監督の作品を初めて鑑賞。

彼の作品については、復讐・狂気・残酷・エロスなどその鬼才ぶりを聞くことが多く、今まであまり興味が湧かなかった。今回は若干トーンを落としているというので機会があったら、劇場で観てみたいと思っていたところ、友人に誘われて鑑賞。

独特の作風のホン・サンス監督の作品よりはわかり易く、ちょっと歪んだ愛の形ではあるが、大人の悲哀なラブストーリーとして楽しめた。

刑事と被害者の妻との不倫。禁断の恋、それだけのことならそんなに珍しい話ではないが、パク・チャヌク監督が描く世界は心理描写がかなり難しい。

男が山頂から転落死した事件を追う刑事へジュン(パク・ヘイル)が魅力的な被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に惹かれる。ソレもまた特別な想いを抱いたというのだが、へそ曲がりの私はきっとソレがへジュンを利用しようしているのではないかと、ずっとソレのへジュンに対する表情や仕草をスクリーンの中で追い続けていた。

自殺なのか他殺なのか、事件は解決したように見えたが、ソレのアリバイを崩す証拠、それを見逃そうとするへジュンの歪んだ愛。現実と妄想の区別がつかない程ソレに惑わされているへジュンの様子が刑事としての誇りも消えて痛々しい。

嫉妬深く、執念深いソレが醸し出す愛欲の描写は、やはりソレがへジュンを惹き付ける言動をわざとしているようにしか見えない。それもひとつの愛の形なのだが。

男と女が交わす視線、微妙なカメラワーク、相手の空間にいるかのような錯覚、印象的なショットの数々がより物語をスリリングにしていて、最後まで飽きさせなかった。

ラストシーンは狂気的ではあるが、別れても永遠の未解決事件としてへジュンの心に残りたいソレの深い愛ゆえに成したことなのか、ちょっと唸ってしまうような結末だった。

途中、タン・ウェイが林寛子に、パク・ヘイルが眞島秀和に見えてしまって困ったのだが、一緒に行った友人も同じ様に見えたというのを聞いて、何だか可笑しかった。(余談です)
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