ルイまる子

別れる決心のルイまる子のレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
5.0
私はバクチャヌクと全く同じ感覚だ!I know exactly how you feel!여러분의 기분을 정확히 알고 있습니다! 本作は深い美学と感覚を持つ人、そして行間を読む時間を長年送ってきた人類には深く理解出来るが、人と人の結びつきが希薄で、感覚を育てる時間を無駄としてきた人類には難しいだろう。そしてバクチャヌクは、そういう行間が読めない層に、わざとぶつけて来たのだろうと思う。近頃の世の中に息苦しさを感じているからこそ、感覚だけで成立する愛を描いた。近頃本作のように、一見メロドラマ、またはほのぼの映画、実は「あなたの本質を試しています」という現代人へのチャレンジ映画が出てきて嬉しい!そうでなくっちゃ!『ちひろさん』だってそういう類の映画だ。別にその本質を見抜かなくても十分楽しめる映画だが…。

主役ヘジュンの奥さんにファクトだけを重視する女を登場させている。そういう損得主義、論理性や、原理原則に従って生きるのが至上目的みたいな人に嫌気が差し(いや、知的で潔癖症の彼には奥さんの無駄のなさは相性が良かった筈だが)、なにか足りないと、モヤモヤした情熱を抱えていた。だからこそ死人からのメッセージを言葉でなく、絵「写真」から、受け取り成仏させることを生き甲斐に仕事に没頭してきた。そして、ああ、対照的な愛に溺れる。一目見た瞬間から惹かれ合い彼は崩壊した。そんなシナジーは一瞬で生まれる。説明しない、感覚だけのストーリーテリング。

エロチックだが、脳を刺激させるエロチシズムで、直接的なsexはない。むしろ、女を眺め続ける、美術品みたいに眺める。社会的に弱い立場の中国移民で男にすがるしかない女を描く。「女性蔑視」を堂々と描き、どうだ?こういう力関係がゾクゾクするんだよ?男はこういう弱者=女に寿司を食べさせたいんだよ?どうだい?とわざわざ言っている。流石ひねくれもの、または変態のバクチャヌク笑笑 ヘジュがイキナリ、彼女の家にぴったりと側に居たりする表現もあるが、あれは願望。本当に居るわけじゃない。そういう急にぶっ飛ぶ表現もあるが、ルイまる子自身が正にそういう脳なんで、なんとも思わなかった。しかし、なんでこの人急に瞬間移動するの?と思う人もいたかも。

【若干ネタバレ】しかし、ブロットがしっかりしているからサスペンス好きにも見応え十分だ。映像、小物の解釈全てが素晴らしい。山頂から落ちるシーン、赤の登山服、スマホも赤だ。同じ機種のスマホをおばあちゃんと取り替えていた。アプリから徒歩数がわかり、彼女の犯行が分かる。録音の声から伝わるあれこれも良い。スマホやスマートウォッチの使い方が秀逸で、それに関してはバクチャヌクもテクノロジーを認めているらしい。翻訳アプリで彼女の独り言をいちいち翻訳する変態にも役立っている^^;手の甲の傷、3本線!美しい!緑か青かわからない色のワンピース。その言葉を何度も繰り返すが、見え方によって違う物事の隠喩なんだろうか?目薬を指す何度も、目がアップになる 目の映像が繰り返される。目が疲れやすいことと、不眠症であることで、ヘジュンの弱点を描いているが、目が悪いとは、視聴者への意識下に植え付けるメッセージか?不眠症については、ヘジュンが、ソレを監視中、呼吸を合わせているうち眠りについたという珍事もあったが、初めてよく眠れたと言っていた。初恋という隠喩になるのだろうか。二人で居る時の心の動きはマーラーの交響曲第5番で表現する。彼女が韓国語を覚えたのは時代劇。だから言葉遣いが古いところ、唐の時代から来たのか?と訊いた。晩ごはんはアイスクリームだけだ!(きゃわいい!でも栄養摂れてるか心配…)カラスに墓をつくってあげる、そのカラスの羽を拾い彼は中国語初級のテキストに挟んでいた(中2かっ?!)理想の女で彼が好きになる要素満載だ。これもひょっとしたら悪女の手口かもしれない。全て1秒たりとも見逃せない美しい映像。最後の靴紐を締める所は新たな決意だろうか。悪い女ー悪いかどうかも不明。色々ミステリアス。一番笑ったのは、夫が死んだ直後なのに、時々薄く笑っている。事情聴取で若い刑事が訝しがり、「笑ってるんじゃ?」と何度も言ったところなんか可笑しかった。実は覚えたての韓国語を間違えるとクスっと笑う癖があるといったが…本当の所はびみょうにわからない…そんな正体不明だけど純粋そうな女に溺れる男の普遍的なメロドラマ、ビバ!バクチャヌク!!!サランヘヨ!사랑해!
ルイまる子

ルイまる子