ギルド

ヨーロッパ新世紀のギルドのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)
4.2
【偏見から始まるナショナリズムの限界】【東京国際映画祭】
■あらすじ
出稼ぎ先のドイツからトランシルバニアの村に戻ってきた男が直面する出来事を通して様々な人種が錯綜するルーマニアの現状をあぶり出す作品。カンヌ映画祭コンペティションで上映。

■みどころ
面白かった!
この映画は2020年にトランシルヴァニア地方で実際に起きた事件から着想を得た映画で、新たな部外者を住民の種族的なマジョリティ・マイノリティ問わず新たなマイノリティを敵とみなして叩く話である。

主人公のマティアスは食肉処理の工場で罵声を受けながら働くが、ふとした拍子で上司を突き倒して怪我をしてしまう。
やがてヒッチハイクして捕まえようにも中々に拾ってもらえず、家族の元へ戻っても自分の取った行動や横柄な態度に妻にすら呆れられる始末である。
本作はそんなマティアスと息子・妻・元カノとの関係の変化と、元カノが経営するパン工場に雇われた外国人労働者と周りの反応、という2つの軸で展開・錯綜していく。
そこで村人は協会という絶対的存在を盾に外国人労働者を追放しようと動くが、この構図はSNS・銃・家父長制など形を変えて展開し、ナショナリズムにおけるバランスが崩れる事への不安・恐れへの防衛反応故に描くのは普遍的だと思う。

本作はルーマニア映画節全開な「外国人嫌い」の映画で衛生環境・宗派の偏見まみれで叩きのめすのはラドゥ・ジュデ作品でよく観るけど、面白い所はそこに部外者を信じきっても良くないと警鐘を鳴らすギミックが搭載してて独特な映画だと感じました。

特に不安で感情的になる人間の主張に精度が悪いように、偏見に満ちた暴論の局地が終盤の無限議論に続き今年鑑賞した「アンラッキー・セックス」の異端審問のような匂いを感じさせ、暴論に暴論を重ねる姿はコメディに昇華している。
全体的に薄暗い寂れた画作りも良かったけど、本作の随所に散りばめられたブラックコメディが面白かったです!

部外者を叩きのめす姿は良くないが、では部外者が牙を全く剥かないと信じるのも…?
ギルド

ギルド