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トリとロキタのmakoのレビュー・感想・評価

トリとロキタ(2022年製作の映画)
4.5
《離れたくない、ただそれだけ。》
◎90点

第75回 カンヌ国際映画祭75周年記念大賞。
監督・脚本: ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ。

ダルデンヌ兄弟の作品は『ロゼッタ』、『その手に触れるまで』を鑑賞。
『ロゼッタ』を観て、ロゼッタの境遇があまりにも過酷で衝撃を受けましたが、本作は更にサスペンスも加わり、終始ハラハラドキドキしながら観ました。『ロゼッタ』を超えた衝撃作で素晴らしかった。

少年トリと少女ロキタの物語。
地中海を渡りヨーロッパへやってきた人々が大勢ベルギーに暮らしている。トリとロキタも同様にベルギーへやって来た。トリはまだ子供だがしっかり者。10代後半のロキタは祖国にいる家族のため、ドラッグの運び屋をして、はした金を稼いでいる。偽りの姉弟として二人は支え合いながら、出口のない搾取の日々を過ごす。


冒頭から不穏な空気が漂う。
トリとロキタがドラッグの運び屋をやってるのを観て、呆然とし、胸がザワつく。
移民の仲介業者への支払い、家族への送金がロキタを追い詰める。偽造ビザを手に入れ正規の仕事に就くために、更に危険な闇組織の仕事を始めるのだが…。

偽りの姉弟だが、お互いなくてはならない存在で、本物の姉弟に見えた。
過酷な環境の中でロキタにとってトリは希望の光だったと思う。
年端もいかない子供たちが、こんな事をして生きていかなければならない現状を知った。

仲介業者の容赦ない取り立て、祖国の母親からはお金の催促。
ロキタは一生懸命頑張っていた。
時には雇い主の性的な要求にも応えていた。拒否しようにも出来ない。
人の弱みにつけ込んで、人権なんてないに等しい。

トリとロキタには幸せになってほしかった…。

エンドロールの歌が物悲しかった。


89分と長くない尺だけど、見応え十分で良質な作品でした。
本年度洋画のベスト級✨


日本語字幕 : 横井和子
観客 7人
劇場鑑賞 #53
2023 #57
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