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クライムズ・オブ・ザ・フューチャーのMrOwlのレビュー・感想・評価

4.8
個人的にはとても好きな作品。描写が過激なので好き嫌いは別れますね。カナダとギリシャの合作によるSF映画です。デヴィッド・クローネンバーグ監督の作品です。第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品された際、退出者が続出し、賛否両論を呼んだそうですが、それは当然かなと(笑)。とうことでもちろんPG-12指定。監督のデヴィッド・クローネンバーグは1970年に原題が同じ、『クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立』(Crimes of the Future)を制作していますが、本作はタイトルは同じですが、関係性はなく、リメイクでもないそうです。主演はヴィゴ・モーテンセン(ロード・オブ・ザ・リングのアラルゴン役で観たことのある人も多いかと)、レア・セドゥ(最近の007シリーズ、フレンチ・ディスパッチ)など演技の上手い俳優さん達が出演しています。監督のその他の作品としては超能力者同士の闘いを描いたスキャナーズ(Scanners (1981年))、科学者がハエと融合してしまうSFホラー、ザ・フライ (The Fly (1986年))、裸のランチ(Naked Lunch (1991年))など名前を聞いたり、観たことのある作品も多い、
多作な監督さんです。基本的な軸足はSFにあるようですね。ただ機械的、ハイテクノロジー的な表現よりも、有機的な表現を好んでいるように思います。本作でも、テクノロジーはハイレベルですが、見た目は有機物のように見えたり、非対称だったりするギアが多く出てくるのでそうした表現方法が好きな自分としては、本作は非常に魅力的でした。また本作でも「ピカソ」「フランシス・ベーコン」など強烈な表現で観る者の魂を揺さぶるアーティストの名前を出しながら、アートに関して語る場面があるので、クローネンバーグ監督もそうしたアーティストが好きで、表現の参考にしている部分があるのでは、と思いました。表現は過激でグロテスクな部分はありますが、ピカソやフランシス・ベーコンの作品が好きな人は、本作も魅力的に感じるのではないでしょうか。自分のように。また、グロテクスな描写、アート、自傷行為的な身体改造などはある種のエロティシズムを感じる人も少なからず居ると思いますのでその点でエロスを感じる作品でもあります。レア・セドゥをはじめ、出演している俳優陣はその点を良く理解して演じていると感じました。さらに、もう一つ自分が本作に惹かれた点は、SFサスペンスとしての脚本がしっかりしていることです。謎めいた組織、謎めいた刑事、謎めいた犯罪グループ、誰が誰と通じていて、何のために動いているのか、物語が進むに連れてその関係性が明らかになっていくSFサスペンスとしての展開の妙も楽しめて、個人的には非常に満足感の高い映画でした。グロテクスな表現に抵抗がなく、SFサスペンスが好きな方は楽しめると思います。
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