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聖地には蜘蛛が巣を張るのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

娼婦連続殺人事件を描いた作品。

映画の冒頭、女性のトップレス姿から始まる事にも驚かされたのだけど、彼女が娼婦である事にも驚きました。
イラン(イスラム圏)を舞台にした映画で、セックスワーカーが出てくる作品は初めて見た気がするのですが、まぁ映さないだけで、こういう仕事は世界各国にあるのでしょうね。

物語的には、実際にあったというスパイダー・キラー事件を基に、事件を追う記者と犯人の様子が描かれます。
興味深かったのは、犯人であるサイードの人物像。
サイコパスや快楽殺人者といったわけでもなく、静かに心の病んだ男として描かれる。
家族で過ごしていても、どこか虚無的な雰囲気があり、この心の穴を埋める為に殺人を繰り返していたのかもしれません。

記者の捨て身のおとり捜査もあって、犯人は無事逮捕されるわけですが、本作は犯人が逮捕された、その後も描きます。
連続殺人鬼であるにも関わらず、サイードを英雄視する者が現れ、妻や子供も被害者女性を蔑視してしまうと。
女性記者が遭う性差別や性加害の問題も含め、この社会全体を覆う、ミソジニーこそが真のスパイダー・キラーという事でしょうか。

まぁ、いつもの如く、イスラム圏の女性差別は酷いなと思わされつつも、監督自身は宗教は関係ないと仰っていて。
確かにミソジニーな人達は日本にも存在するし、セックスワーカーは給付金の対象から外されたりもしている。
もしも、サイードの様な犯罪者が日本で現れたら、英雄視する人達が一定数いる事も容易に想像がつきます。

子供がサイードの様な人間にならない為にも、フェミサイドを起こさない為にも…そもそも女性が少しでも生き易くなる為にも、ミソジニーという蜘蛛の巣は取り払っていかないといけないのでしょうね。
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