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ヴィレッジの8637のレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.3
す、凄い...今年暫定ベスト。
マルチなジャンルを装いつつ、村を飛び越えて全日本に届けられる怒涛のメッセージが、とんでも無い密度でスクリーンに焼き付けられる。
提示されたフラストレーション。観ながらこちらまで心を抉られなければならない。これぞ社会派映画の真髄。傑作。

えげつないエネルギー。そしてこの"村"という環境でも美を見つけ出しスタイリッシュに撮り上げるセンス。血生臭い男同士の決闘を1カットで描き切るのも素晴らしい。
しかし掘り進めると当たり前のように裏テーマが。混交した社会問題を一つにまとめきって描くのが上手い時点で感服。やっぱり推せる監督だと思った。

藤井道人監督が得意とする(と個人的に思う)、人を殺めることへの罪の意識を感じない、そんな弱い立場の人物の描き方。
社会から外されるのを怖がる心理は「ヤクザと家族」でも同じく描かれていたが、やはり観る側の見守るような緊張感が激しいし、本当に思っていないと描けない雰囲気であろうと思った。

監視の浅いゴミ処理場、ゴミのような上司に告げられた人生逆転チャンス...そんな負のフラグばかりの環境が、虚しさを出し抜くきっかけになる。
現実を一炊の夢だと思えても、そこで(時に犯罪を伴う)行動を起こせるかは、また人それぞれの機動力や勇気によって変わってくる。
夢なら良かったのに、という帰着がとてつもなく悲しい。
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