見応えしかない映像に、最後1時間の贅肉がついた伝記。今回は歴史を体感する為のIMAXだった。ノーランだからこその映像表現によって、伝記における私情が豊富に映された。皮肉に思えて蟠りが消えないのは日本人の血筋故か。わたしの戦争倫理が試される。
ただ問題はこれがフィクションであるという点で...
池のほとりでアインシュタインとどんな会話を交わしたか。真相はノーランにも分からない。
各地の科学者を順々に渡り歩き、噂は広まり飛躍して...学者における青春のように演出される。年月を経てプロジェクトは壮大になっていく。感じちゃ駄目なんだろうけど少しワクワクしたよね。これは構成の功罪。
爆破実験が進んでいくと日本の話題も浮き彫りになっていき、ここで少しモヤる。日本がダシにされるのは分かっていたし歴史上仕方ないのだが、許されてはならないジョークがあることは500席の同士と共有できた気持ちだろう。
やはり1時間58分目には息を呑んだ。あんなにも赤く弾けた画面の中で無音。忘れていたけどこれはノーランの映画だったのだ。タメにタメて起こる爆発音こそ、ノーランの作家性の結晶だなと思った。
終盤の尋問も見応えあると言えばある。言葉一つ一つの意味が不用意に切り取られる場で、意味も求めずに社交辞令的裏切りを繰り返していたあのシーンの冷たさは、本作公開に至るまでに起こった各国の反戦的スタンスにも似ていた気がする。
GWに復活したということで今回も池袋のIMAXフルサイズに嬉々として観に行った訳だが、IMAXカメラと通常カメラの使い分けがホイテマ氏のフィーリングでしかなくてそこは少し萎える。