dm10forever

Veilsのdm10foreverのレビュー・感想・評価

Veils(2021年製作の映画)
3.8
【Likewise】

こちらもBSSTOにて。
ある同性愛カップルの結婚を描いた短編映画。

「短編らしい」という以上に、この監督さんの描き方なんだろうね。
この作品の映像や質感にエグみや雑味はあまり感じないので、観ていて「これはちょっと・・・」ってなるようなセクシャルな表現とかもないし、サラっとした肌触りの映像は観ていても心地よい。

まあ「内容が表面的・・」って言ってしまえばそうなのかもしれないけど、この作品は短編だから別に表面的でも断片的でも僕は構わないと思うけどね。
要は「ハマるか否か」だけだろうしね。

ここ数日、LGBTQやマイノリティに関する、いわゆる「多様性」に関連した作品を観る機会が多く、また時を同じくして、現実社会でも考えさせられる出来事や心が痛くなるような事件などが立て続けに起きたということもあって、一層「尊厳」というものについて色々と考えた数日間でもありました。

この作品では、ある2人の女性が「同姓婚」という選択をして、記念にブライダルフォトを撮ろうということになったんだけど、事は二人が思っていたようには上手くいかず、そんな中でそれぞれの「同姓婚」というものに対する向き合い方のちょっとした温度差というものも顔を出してくる・・・というお話。

作品自体はとても穏やかだし、映像も涼しげだし、登場する二人もほんわかしているので、決してギスギスとした感じにはならない。
でも、だからこそLGBTQの人たちが置かれている現状は、「私たちが良ければそれでいいじゃない」という割り切りだけでは必ずしも立ち行かない「寄る辺ない存在」であることも実感させられてしまう。

ふとした瞬間や会話の端々に紛れ込むそれぞれの悩みの元凶は、漠然とした社会の目に対する不安。
それは、決して自分を無責任に評価する第三者だけではない。
それこそ一番近いはずの家族に対して、自分が同性愛者であることを打ち明けることは、もしかしたら他人に打ち明けることの何倍も勇気がいることなのかもしれない。

最近は「多様性を認めよう!」が全方位体的な潮流であるため、ドラマなんかでも「そうか・・・でも例えお前の性別がなんであれ、お前は私たちの子供だ!」っていうEテレ案件のような着地に描かれることが善しとされるのかもしれないけど、実際問題、そんなに理解や共感がスムースなご家族ばかりとは限らないし、それこそ今までずっと一緒に生きてきた中で、ニュアンス的に「決定打は言い出せない」って当人が躊躇うような環境である事だって大いにあると思う。

それって「言わなきゃだめ?」
それって「受け入れなきゃだめ?」

・・・いや、語弊があるな。
きっと、自分の子供がそうだとして、親にそのことを打ち明けるって決断するときは、相当な覚悟をしてきてるんだろうな・・・ってことは想像できる。経験はないけど。
親だから・・・自分の子供が悩み、苦しむ姿は見たくないから・・・。
だから受け入れてあげたいって「思う」。
思うけど、心がついていくのかは正直わからない。
そして、僕の心に「無理」が生まれるかもしれないことを子供は敏感に感じているから、だから「言えない」かもしれない。

だとしたらね。
「言わない」っていう選択肢は決して100%間違っているわけでもないんじゃないのかな・・・って。
もちろん、僕は言って欲しいし受け入れてもあげたいけど、それを「一般論」と押し付けるつもりもないし、そもそもこれに「一般論」なんてあるの?って話しだし。

そういうセンシティブな悩みって、どんなに明るく振舞っていてもきっと誰しも抱えているもんなんだよね。

他人に認めさせる必要なんかない。
でも、違うからって他人から否定される謂れもない。
ラストシーンの二人の幸せそうな笑顔を見て、何故だかわからないけどちょっと泣きそうになった。

・・・そうだよな。
なんか、自分の中でふんわりしていた価値観がちょっとずつ自分なりの形になってきたような気がした数日間でした。
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