このレビューはネタバレを含みます
日活ロマンポルノ50周年プロジェクトにおける3作品の1つ、『くれなずめ』『ちょっと思い出しただけ』の松居大悟監督作品。
原作は「人のセックスを笑うな」の山崎ナオコーラさんの小説ですが、未見です。
一応、R18+指定作品ですので、この先の閲覧はご注意を。
この先は、映画の終盤の内容を含むネタバレがあります。
このような試みは以前にも行われていていますが、元来の男性向け性思考よりも、今回の3作品は、女性の視点で物語が進行する作品が集まった印象です。
率直な感想としては、主人公のさわ子の考え方が変化するまで時間がかかるのは分かるのですが、停滞している時間が長く、ロマンポルノの基準からも外れていて、体感以上にラストまでが長く感じてしまったのが、少し残念でした。
物語は、おじさんの写真をコレクションする趣味を持つさわ子が、年上好みなのに父親とは上手くしゃべれずにギクシャクしている。その思考は続きながら、同僚の森との距離が縮まる中で、さわ子の心境が少しずつ変化していくというお話。
これを書いている人は50代のおじさんなんで、おじさん目線で映画を観てますが、おじさんから見ても時代の変化に迎合しきれていない同世代の男性を目の当たりにすると、私自身に置き換えて、そうならないようにしようと気遣う反面、価値観の変化に抗いきれない部分もあって、生きずらい部分もあります。
そういう不器用さも受け入れる主人公のさわ子は、本当の意味での恋愛の実感を得られていない描写は台詞だけでなく時間をかけて、いろいろなおじさんとの関係を見せていくのは明快で分かり易かったです。
その中で、同僚との関係を深めていく過程も不自然ではないし、年上趣味と平行していくところとか、純粋な恋愛になっていない関係性もリアルだと感じましたが、妹は純粋に恋愛に発展していくのを見受けながらも、自身がずっと停滞している感じを観続ける時間が、長く感じたのは事実でした。
2時間弱の時間で人が成長するのは物語の嘘かもしれないですが、ロマンポルノと銘打っている割には展開が遅いと感じる部分は残りました。
それでも父親との関係性を紡ぎ直していく終盤の展開は良かったです。
R18+指定の恋愛映画もありますし、ロマンポルノを意識させないほうが普通に観られたようにも感じましたが、知らない世代や女性の観客にとっては、思いとどまる時間の方がリアルに感じるのかもしれません。