すがわら

夜明けまでバス停でのすがわらのレビュー・感想・評価

夜明けまでバス停で(2022年製作の映画)
5.0
 コロナ禍により失職しホームレスなってしまった女性(64)が、ゴミ拾いだけが生き甲斐の引きこもり男性(46)から社会のゴミとみなされ撲殺されるというこの世の終わりみたいな事件を元にした映画。マジメに生きてきた人がバス停で夜を明かさなくてはいけなくなるまで困窮し、挙句の果てに撲殺されてしまうとはどうゆうことなのか。コロナ禍によって露呈した社会の不条理と欺瞞に満ちた自己責任論に対する憤懣が文字通り"爆発"する凄い作品。

 かねてから家族との折り合いが悪く、なおかつ独り身だった主人公はコロナ禍により職と家を失う。街頭テレビでは、ときの総理大臣が自助の重要性を説いている。主人公はホームレスになったのは自己責任だと自分に言い聞かせて必死にもがくが、あっという間に三度三度の飯にも事欠く程の困窮が常態化する。「東京オリンピック2020 がんばろう!ニッポン」の立看板を尻目にゴミ箱を漁り残飯を貪り食う日々も長くは続かず、ついに力尽きてしまう。
 そこで助けてくれたのが柄本明演じる古参ホームレス、通称"バクダン"。バクダンはかつて黒ヘルだった。主人公は彼が熱っぽく語る全共闘の歴史にはそんなに惹かれなかった。ただ「なぜ爆弾を作ったのか」ついては興味が湧いた。彼は「爆弾作りとは、爆弾を持ち、自己の存在に問を立てることが主たる目的なのだ」と答える。そして主人公は爆弾を作る。

 こっから現代版『太陽を盗んだ男』が始まるぞ!ってところで終わってしまうのが勿体無い気がするけど普通に面白かった。
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