すがわら

理大囲城のすがわらのレビュー・感想・評価

理大囲城(2020年製作の映画)
5.0
 面白かった。
 普通選挙の実施を訴える学生たちが政府によって香港理大に閉じ込められた事件、香港理工大学包囲事件のドキュメンタリー。

 「ゴキブリ共をぶち殺してやる」と息巻く警官隊が学生(多くは未成年)を弾圧。彼らが普通の街の中で、しかも子供に向かってスタングレネードや催涙弾を投げまくる様子はグラセフみたいだった。殴る蹴るは当たり前で、逮捕するときは数人で飛びかかって無抵抗になるまで顔面をアスファルトに叩きつけたりする。対話には一切応じず、単に仕事だからという理由で、公権力を笠に着て未成年者に暴力を振るう、本当に碌でもない大人が数百人規模で襲いかかってくる恐怖は想像を絶する。

 「今、理大には記者が殆ど残っていない。警官隊が突入してきたら誰にも知られずに殺されるかもしれない。そうなれば天安門事件の二の舞いだ。民主化運動を始めたときから死を覚悟していたけど、犬死にはなりたくない。」というデモ隊の嘆きは切実だった。

 ご多分に漏れず、学生達は一枚岩ではなく、理大封鎖が長引くにつれ徐々に内部分裂の兆しが見え始める。話し合いの場では絶えず怒号が飛び交っていた。構内は沸騰する坩堝と化して今にも吹きこぼれそうな勢いだった。一連の籠城戦シーンは緊迫感があって、ぶっちゃけ映画として凄く見ごたえがある。しかし、それによってこれがリアリスティックな劇映画ではなくリアルな記録映画であり、紛れもなく現実に起こったことなのだという事実が際立ち、より一層深刻に感じられた。
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