すがわら

しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜のすがわらのレビュー・感想・評価

1.0
 ラスト、野原ひろし35歳・商社勤務・家持ち・既婚・二児の父が今回のヴィランである30歳・派遣・ヒョロガリ・童貞・ドルヲタに「君はまだ若いじゃないの!いくらでも人生変えられるよ!頑張れ!」と激励するシーンがあまりに残酷過ぎて泣きそうになった。

 非理谷君の顔がキモ過ぎるためか、多くの観客が見落としてるけど実は彼はかなり頑張っている。学校ではイジメられてて、家庭でもほぼネグレクト状態で、幼少期からどこにも居場所が無い。だから他人と全くコミュニケーションが取れないし他者からの視点を上手く内面化出来ていないので身嗜みが変。それでもなんとか派遣の仕事を見つけて結構マジメにやっている。その頑張りは一切報われてないし誰からも承認されないけどグレずによくやってる。俺だったらティッシュ配りなんか辞めて適当に人殺して自殺してる。彼の置かれている状況はもはや当人の努力如何で解決される問題では無い。
 にも関わらず、ひろし達は「若いんだから頑張れ!」と言う。無責任な物言いだと思った。これ以上何を頑張ればいいのか。せめて具体的にアドバイスしてやってほしい。加えて奴らは「支え合う友達や仲間を作れ!」とも言っていた。30過ぎて新たな交友関係を広げるのって普通の人でも至難の技だろうに。

 劇中、非理谷君はたびたび自分の人生を顧みて「どうしてこうなってしまったんだ」と嘆く。どう見ても彼の人生には何かしらの公的支援を必要とする瞬間が多々あったし、然るべきタイミングで然るべき支援があれば彼の人生も今よりマシだったんじゃないかと思う。彼のような人間が公助のセーフティネットからあぶれて不利益を被っているのだとしたらその原因は政治に求めるのが道理。それを自助や共助の問題にすり替えるのは超良くない。

 いわゆる弱者男性問題を扱いながら最終的に全てをゆるふわな自己責任論で片付ける。しかも美談風で。いやらしい映画だと思った。
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