いみ

窓辺にてのいみのネタバレレビュー・内容・結末

窓辺にて(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

とてもよかった。今泉監督作品のなかで一番好きです。…今の時点では…。
というか、今日1日がカチッときれいに完璧な奇跡のような1日だった、というしかない。
映画ってつくづく、体調や見る環境、そのときおかれた自分のすべてに影響するもんだなと感じました。

おかれた環境はさておき、映画だけの話をするとして。
よかった。

役者さん、よかった。
今泉組の役者さんもたくさんいてみなさんやはりはまってました。
稲垣さんもどはまってた。
本当の稲垣さんはもっとわがままでおしゃべりだろうから、やっぱり上手いなぁと思ったな。
ティナさんただ可愛いだけだと(偏見ひどい)思っていたけどはまり役だったなー、よかったです。

話、面白かった。
設定も展開も全く飽きずに見られた。
人間ってやっぱり面白いなと思わせてくれてありがとうと言いたいです 今泉監督へ。
浮気は文化だという有名な言葉がありますが…
そうかもしれないなと思ってしまうくらい、主人公の冷静な気持ちに寄り添うことができた、不思議な体験だった。普段私は浮気なんて最低だとガミガミいうタイプなのに。
サッカー選手だか、バスケ?選手だかわからないけど…若葉さん演じる有坂がブラン娘みたいな女の子と浮気しちゃうのわかってしまったし、紗衣が若さと情熱…何より小説を書いてくれる…の作家と体を重ねる気持ちもわかってしまった。
だよね、なるよね と思っちゃった。

留亜と優ニのキャラクターも、出てくる「ラ・フランス」の文面もとてもよかった。
会話の全てが書き留めたいと思うくらい反芻したいものだったな。


はじめ
喫茶店で「ラ・フランス」を読み終え、水が入ったグラスを光に透かし指にそれを当てて人を待つ茂巳。
扉が開く音がしそちらを見る
暗転しタイトル。



ラスト
(留亜の彼)優二と話している。
優二が、茂巳から、留亜が「泣きながら別れたくないと言っていた」というのを聞き、嬉々として
「彼女と話してきます」と席を立って出ていく。
ニヤニヤ笑う茂巳。
「すいません、フルーツパフェ2個ください」
「わかりました」
「あ、やっぱり1つ」
「かしこまりました」
で終わり


…………………………………………………
思ったこと色々

茂巳が浮気した彼女に腹が立たないのは、純粋にそういう人なんだと思った。
有坂の妻も優二も「サイコパスさいてー」と言っていたけど、そういう人、面白いなと思う。
まぁ、茂巳は"主人公"で、私は"視聴者"だから(リアルな人生に踏み込まない人だから)かもしれないけど。

この映画によって私は
ラブホテルから朝出てきた男女を見ても、あの二人は一晩中話をしてトランプをしていてなにも致してないかもしれない と、思える想像力の幅が広がりました。
目に見えることがすべてではないと思って生きてきたけど、より一層それを強くしていけます。

「小説を書かなくなったのは、書くことで紗衣さんとのことが過去になるのが嫌だったから」
と言った荒川の指摘は、茂巳は あ、そうなのかも
とそのとき思ったような気がした。

妻が浮気をしている という相談を、まさに今浮気をしている有坂にして、そのあと有坂の妻が市川夫婦に相談をしにいく というあの会話も展開も、とてもよかった。
ただ、子供には聴かせないほうがよかったかな。

「ラ・フランス」が読んでみたい。
あれは今泉監督が書いている文章なのかな、とてもいいんですけど。
読んでみたいと思った。

転がる石はまるくなる。
留亜のおじが雨の日に川で拾った丸い石が出てくるけど、あれもよかった。
転がって角がとれたあの石はまるで茂巳のようだった。たゆたうように生きて人の話を聴いている茂巳は喜怒哀楽を削いだ仙人みたいな人間だった。人は人間を極めるとまんまるな石になるのかも。

タクシー運転手の
競馬は見られないけど馬肉は旨い、パチンコは時間とお金を同時に失う最高に贅沢なものだ
の話も、
世捨て人になった留亜のおじとの会話も、
留亜や優二との会話も、
すべて思い出したいひとときだった。

ライターだからだろうけど、喫茶店に入ってメニューを見ずに「コーヒー、ブレンドで」と言うのと、そのコーヒーを持ってきた店員に「ブラックで」と瞬時言うのもかっこいいなーやってみたいなーと思った。
多分一生無理。メニューたくさん見てコスパがいいものとか選んじゃう。

パフェを食べる留亜も、700円のホットミルクを「たけぇ(小声)…あ、でもいいです、ホットミルクください」という優二もよかった。

出てくる食べ物がすべて美味しそうでよかった。
松金さんの握ってくれたおにぎり食べたい。

パフェって、主人公であり、人生であり、この映画自体なのかも と思った。
劇中でも出てきたけど、パフェはパルフェ、パーフェクトなデザートという意味らしいけど全然完全じゃない。甘いし多いし胃にもたれるし好みも分かれる。
主人公は一見仙人のようなパーフェクトな人だけど大きな欠如があると言ってもいい。
人生は色とりどりの出来事が(フルーツが盛られている)あるけど時には冷たいアイスやコテコテのクリームのような出来事があって体に合わないこともある。なんで生きてる(注文した)んだろと思うけど、結局やめられない。楽しいことも素晴らしいことも少ないけどあるから(パフェも時にはちょうどいい量で本当に美味しいこともある)。
この映画は監督にとって満足でありたいと思いながらも、完全なものを作ったら作り手として終わってしまうとインタビュー(ぴあ、関西)でも言っているように、それ(完璧=パフェ)に憧れて撮る(=注文する)けどまだまだ完全なものは撮れない(=胃もたれしちゃう)…
というか。文章変でごめんなさい。


映画って素晴らしい。
空いてる映画館ってとてもよかった。
少し高いけど、安いから、安いだけで行く映画館より、今見たいからという理由で見るっていうの大事だなと思った。

人間関係って苦手だけど、人間ってやっぱり面白いなと思った。
人生って面白いなと思った。
先が全く読めないから怖いこともたくさんあるけど、今日みたいな日があるからやめられないなーと思う。

追記

どうでもいいことだけど
茂巳、寝ている妻にブランケットかけるの優しいけどかけ方めちゃくちゃ下手だなと思った、ふわってかけてほしいよ。
あと
手の洗い方誰か教えてあげて!
手を濡らさず乾いた手にハンドソープつけたら乾燥の原因になり手荒れして余計バイ菌寄せ付けてしまうんだよな。流すのも早すぎるし…
てどーでもいいけど気になった。
いみ

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