アラサーちゃん

丹下左膳餘話 百萬兩の壺のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

丹下左膳餘話 百萬兩の壺(1935年製作の映画)
4.5
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「丹下左膳畭話 百萬両の壺」
ある城主の先祖が、百萬両のありかを記した地図を小汚い茶壺に塗りこんだという。
江戸へ養子に入った弟の元にある壺を取り戻そうとする殿様だったが、弟は兄に反発して壺を渡さないどころか、ガラクタとして壺を屑屋に売ってしまう。巡り巡って壺の持ち主となった孤児の安吉と、彼を引き取ることになった弓屋のおかみと居候の丹下左膳は、壺を巡るドタバタに巻き込まれていく。1935年、日。

おっもしろーーーーい!
ほんとにほんとにこれはおすすめっ!

なんでこんなに昔の日本映画を面白いっていえるのかって、このプロット。頭によぎったのは、タランティーノやガイ・リッチー。
主人公のちょっとおとぼけなキャラクターや、ここがこんなところで通じるの?!っていう意外性。無駄なくあらゆるキャラクターのストーリーが進む小気味いいテンポ。
とある古銃を巡ってしっちゃかめっちゃかになっていく「ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」なんてまさにですよね。

とある高価なモノを巡って人々がてんやわんや。

取り返したい元の持ち主。
価値を知ってそれを追う奴。
悪意なくそれを邪魔する奴。
知らずに大事に扱う現在の持ち主。
すべてを引っ掻き回すトラブルメーカー。

いろんな人々がつながって、交差して、みんなが「壺」にたどり着く。

現在にも通ずるコメディの面白さがとんでもない。絶対にやらないっていうのはフリで、だいたい次のコマでしれっとやっている。コテコテだけど、これが今から80年前のセンスと思うと度肝抜かれます本当に。
「おれはお前のせいで頭が痛いんだ!絶対に送ってかねえ!いやだ!」のあとの場面転換で夜道を歩く左膳とか。
「あんな汚い子に誰がご飯なんてやるんだい!」って言っといて「ごちそうさん」って手を合わせる安吉に「お利口だね」って満足気なおかみとか。

おかみと左膳の夫婦漫才のようなやりとりがおもしろい。
とくに安吉を何に通わせるかというやりとりで「道場だ!」「寺子屋!」という言い合いのあと、がっしゃーんとお琴(おかみさんは唄の名手)と左膳の招き猫が壊れるところ、ほんとおもしろい。

対する、源三郎(壺を兄から受け継いだ弟)と萩乃の夫婦。ただ単に源三郎がクズなだけで面白みのないコマかとおもえば、はじめは、夫を立てる健気な妻だったのが、話が進むにつれて立場が逆転していくところにふつふつと笑いがこみ上げる。

とはいえ、天涯孤独になった安吉。彼のふとしたシーンに胸打たれるところもあり、笑ったり感動したりでとても楽しめる映画でした。

終戦後に行方不明になっていたというチャンバラのカットも挟んであって、ラストのオチもカンペキ◎
字幕付きでぜひいろんな人に見てもらいたいなーとおもう映画でした!