アラサーちゃん

DUNE/デューン 砂の惑星のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.5
私が珍しくドはまりできた長編SF。これまで「スターウォーズ」だったり「ロード・オブ・ザ・リング」だったり、はたまた「ハリー・ポッター」だったりと、結構なSFおよびファンタジー系統の壮大なスペクタクル映画をどちらかといえば嫌厭してきたわたし。
ただの食わず嫌いだったのか…?まあ、そのへんはおいおい克服していきます。

ということで、長々とした映画が苦手なわたしですけど、この映画、150分強のわりに、体感まるで1時間でした。あっという間のエンドロールだった。
確かに物語が動き出すまでの序盤は少しもたついた印象もあるものの、それでも何かが起こりうるザワザワ感があり、キャスト陣が飽きさせない色を見せて引っ張ってくれるので許容範囲。
実際、ラストまで見てみれば、序盤でイントロダクションを丁寧に描き出すことでこの複雑怪奇な物語により入り込めたなと思うので、正解だったのだと納得する。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。好き嫌いは置いておいて、本当にこの人ってすごい監督だなと。これだけしっちゃかめっちゃかの世界を、綺麗に整理整頓して、なおかつ観ている人をワクワクさせる娯楽作品として完成させるっていったいどんな頭しているんだろう。

この人の映画っていつも母性が炸裂しているのだけど、今回もまたしかり、そこかしこに溢れんばかりの母性が盛り込まれていましたね。そのあたりはジブリとも繋がるふしがある。
女性を美しく描き出すに長けた映画監督といえばフランソワ・オゾンだとわたしは思っていて、ただ、彼とはまた種類の違う、美しい女性、母性の描き方。気高くて尊い。慈しむべき母性がいろんな表情でスクリーンに映し出されてくる。映画監督と父性についてはまあるけれど、こういう監督はなかなか稀有な存在じゃないかと勝手に想像している。

炎や爆破といったパニックシーンにおいては、圧倒的で見ごたえのあるパフォーマンスでありながら、どこか寂寞を感じさせる。本来、大盛り上がりとなるべき爆破シーンにこそ、この映画随一の切なさと無常観を漂わせてくる。
一方に偏りがちなその熱量を、うまく両面重ね合わせて見せてくれるところがさすが、ドゥニ・ヴィルヌーヴというか。この危ういアンバランス感にわたしはどうもついやられてしまうんですね。

乾いた砂の向こうに見る燃え上がった炎、スローモーションで見せる大爆発。沸騰してのぼせそうなほどの熱さを思わせながら、血が凍るような寒さも感じさせる。これはもう、すごいなあ、としか言葉が出てこない。

全体的な印象としては…ナウシカ…いや、それは原作にインスパイアされて完成されたのが「風の谷のナウシカ」なので仕方ないけれど。
なんだか、終始、「え?顔、大丈夫?」「砂当たるの痛くない?」「口ん中とか目ん中とか砂だらけになってない?」とか、そんないらん心配を頭の片隅で。そこだけちょっと残念。でも、あれ見てたらいたたまれなくなりますやんか。

150分なのでいろいろと思うところはあったのだけれど、メモするの忘れていて、いまだに覚えている印象といえばこのくらいかな。でも、続編が楽しみになる映画でした。ゼンデイヤちゃん、刷り込みは強かったけれどシーン自体は少なかったので次が楽しみ。ステラン・スカルスガルト閣下はここで述べるまでもなくさすがという役どころでの怪演でしたし、シャーロット・ランプリングも申し分のない存在感。顔は見えなくとも。お慕いしております。

あ、ちなみにリンチ版は未見です。