グレハニスト森田

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IVのグレハニスト森田のレビュー・感想・評価

ロッキーVSドラゴ:ROCKY IV(2021年製作の映画)
4.0
今回の再編集版の純粋な評価とナンバリングとしての作品の評価が個人的にかなり違うので分けて考えてみようと思う。

まず再編集版としての出来は申し分なかった。
アポロ・ドラゴ戦までの流れが重厚で重いシーンとなったおかげでアポロの死が一層壮絶なものへ昇華したのは言うまでもなく、いちいち言葉にしなくてもわかるような説明シーン(ドラゴの話をしにアポロが家に行くと電話してくるシーンとか)がカットされたお陰で、極めて高尚な映画に成り上がった感がある。
もう畳み掛けるように90分終わるんで没入感が半端ない。
これ単なるエクステンド版でないというところがヒジョーに大きなポイントだわ。

未公開の映像が40分程度差し替えられているわけだが、モーレツなシーンも多い。
顕著なのはやはりエイドリアンとのキッチンの一連のシークエンスの追加。
冒頭ではロッキーがアポロを止めるようエイドリアンが説得を促すシーンが追加されたことにより、アポロの願いに躊躇するロッキーの揺れる想いが一層際立った。
なによりも「俺を男でいさせてくれ」というシークエンスは、37年の時を経てロッキーシリーズの新たな名シーンとなったに違いない。
スタローンがずっと気がかりだったのも当然である。
一方でデュークの「アポロが死んで俺の一部も死んだ」という名シーンも当然に残されており不必要な削除はないのでひと安心。

地味なところでは「アイ・オブ・ザ・タイガー」の使い所。
オリジナル版は冒頭、今回ではラストに持ってくるあたり相当わかってる。
あの曲は最後に聴きたいんだなぁ。

劇場版の音、特に打撃音が凄まじいことになっておりこれは映画館で体験できて本当に良かったと思う。
あの音だけでも聴きに映画館に足を運んでほしい。

こんな感じで悪くなったところが一切ないわけだが、純粋な続編としての評価は実はちょっとイマイチというのが正直なところ。
初代とは時代も違うし、映画自体のマーケティングも色々変化があったんだろうけども、なんか商業的な映画だなぁという印象は否めない。
MV映画とか揶揄されていたがまさにそんな感じで、実際のところトレーニングシーンはやっぱりロッキーのテーマを流してほしかった。
3の最高の終わりを見ながら、速攻でアポロをシリーズから退場させてしまったのは続編の弊害だよなぁ。
ミッキーの死とは違う、あまり必然性を感じないアポロの死はショッキングなだけで地味に凹む。
まぁいろいろ賛否もあると思うが、1-3まで元気をもらう映画筆頭のシリーズに対して本作はあまりに壮絶で悲壮感が凄まじいという異色作というのが個人的な感想。

余談だけどこの映画の予告編は最高に出来が良い。
2分弱に、この映画もといシリーズの全てが濃縮されて表現されている。
未見の人は是非見てほしい。

再編集版としてシリーズファンなら文句なし、ファンでなくても十分に堪能できる作品となっている。
断然今回のバージョンのがいいに決まってるが、たまに「ポーリーのロボット」が見たくなる日だってあるかもしれない。笑

最後にスタローンの作品に対するコメントで印象的だったことを一つ。
「この映画を見て人生の教訓を持ち帰ってほしいなんて言わない。帰りにアイ・オブ・ザ・タイガーを歌ってくれればいい」
スタローンほんま好き。