グレハニスト森田

ポップスが最高に輝いた夜のグレハニスト森田のレビュー・感想・評価

ポップスが最高に輝いた夜(2024年製作の映画)
5.0
もはや語り尽くされたであろう伝説的企画を振り返るドキュメンタリ映画である。
40年近く経過した今でも語り草になるコンテンツだが、今更新たな発見はあるのだろうか。

さて、「We are the World」のドキュメンタリとしては『THE STORY BEHIND THE SONG』が恐らく最も知られていると思われるが、本作では企画立案からレコーディング当日までの関係者たちの証言に加え、『THE STORY ~』で断片的に編集されたレコーディング当日の風景の実情をかなり濃密に補完してくれている大変興奮する内容であった。
『THE STORY ~』が未見ならば、こちらを観てから鑑賞するのもまた一興か。

最も重要なのは、この企画の中心的存在であったライオネル・リッチーを初めとした参加アーティストへのインタビューである。
彼らの口から語られる当時の振り返りは、『THE STORY ~』で語られていたような”チャリティーイベントの意義”というよりむしろ、『アーティストとしてあのレコーディングへの参加が如何に刺激的なものであったか』に一貫していた点に尽きる。
ケニー・ロギンスですら『当時においてあのダイアナ・ロスとは同列にない』と語るほどであり、我々大衆以上に参加アーティストのほうが互いに興奮し緊張しあっていたという事実はとても感動的というほかない。

個人的にはヒューイ・ルイスのインタビューが実に面白く、プリンスの代役としてヒューイ・ルイスを推したのがケニー・ロギンスであったという衝撃の事実や、いきなりマイケル・ジャクソンやらスティービーワンダーにキムカーンズのラインの下をやれと言われて相当困惑したというエピソードを懐かしみながら話している様子が大変良かった。
マイケルジャクソンのあとにリードを取るのは足が震えたという実に人間的なヒューイ・ルイスが好きになる。笑
他にもスプリングスティーンがスティーブ・ペリーの声を褒めちぎっていたりと書きたいことは山ほどあるが詳しくは本編を観てほしい!

『THE STORY ~』で語られなかったところで一番大きいのはやはりトラブルの数々である。
というかフツーに考えてあんだけの面々が揃ってトラブルがないわけがない。
恋人に聞かせたら売れないと思うから参加するなと言われたシンディ・ローパー、急にスワヒリ語で歌いたいと言い始めるスティービーワンダー、プリンスのつなぎ役的存在と思われて悲しくなったシーラ・Eなどなど。
極めつけはアル・ジャロウが実は酔っ払っていてウィリー・ネルソンのパートをやたら歌いディオンヌ・ワーウィックにたしなめられるという何ともというエピソードも満載。

全てが終わったあと『アドレナリンがバスを乗って駆け抜けた』と漏らしたクインシー・ジョーンズ、最後まで残り『このままこの夜が終わらないでほしい』と泣いたダイアナ・ロス。
締めにライオネル・リッチーは当時を懐かしみつつ、あの日の夜に皆で集まったライオン・シェア・スタジオを”帰るべき家だ”と言って涙した。
参加もしていない俺も何故か涙が止まりませんでした。

これBlu-ray出してくれませんかね。
サイコーだよ、サイコー。