Mariko

ボーンズ アンド オールのMarikoのレビュー・感想・評価

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
3.7
マーク・ライランスのファンである。
ティモシー・シャラメのファンだとは未だに自認していないのだけど、彼が出てくるすべての作品で、彼が登場するだけでその場面が急に輝きだすまさに「オーラ」という言葉以外では表現できない魅力を感じてしまっているので、結局毎作品観ちゃう(そういうのをファンっていうんだと思う笑)。
それ故、よく知らずにキャスティングだけ知った時に迷わずクリップしたのだけど、とにかくグロ耐性ゼロ、ホラー嫌いなので劇場には行かず。でも、うめまつさんの「案外予測がつくから薄目でみれば大丈夫」というアドバイス(笑)のもと、アマプラにて鑑賞。

うーん、困ったなあ。

要は"Call me by your name"と同じテーマ。社会において居場所を見つけられない者同士が互いを理解しあえる存在をみつけた輝き、そのマイノリティ度合いが格段に上がっただけで、青春恋愛ものでロードムービー。そのグァダニーノの美しい描き方はとても好きなんだけど、それとカニバリズムとの相性がどうもうまくない。
否が応でもサスペンスの要素が入ってくるわけだけど、そこがユルすぎる。彼らは究極のマイノリティかと思いきや、その世界にはどうやら案外同族がいる模様で、となるとその州であるいは全米で「謎の猟奇事件」が大ニュースになっていてもおかしくないくらいの話なんだけど、青春ロードムービーだからか、そういう方向にはいかない。要はバランスが良くない。そもそも、どのくらい「食べる」ことに関して切迫してるのかが曖昧だし、あげく、独り身のゲイだったら食してもいいけど、妻子がいる相手だと食した後で「そうとは知らなかった!」って、そのモラルどうなのよ...。

で。肝心のマーク・ライランスは、これが怪演といっていい名演技なんだけど『ブリッジ・オブ・スパイ』でファンになり『ダンケルク』で大ファンになった私としては、瞳の奥に信念と慈しみを湛えたマーク・ライランスを観たいわけで、、、いや今回のはトレイラーでそうでないことは十二分にわかっていたけれど、これまた困った要素。でも、自分のことを名前呼びしちゃう幼児的精神性を持った老男性の気持ち悪さをここまで体現できる人ってそうはいないと思うので、やっぱり凄い。

そろそろマーク・ライランスほぼ主役の地味なドラマ作ってくれませんかねえ。
Mariko

Mariko