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湯道のTSのレビュー・感想・評価

湯道(2023年製作の映画)
4.2
【銭湯を愛する全ての人へ】88点
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監督:鈴木雅之
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:127分
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 2023年劇場鑑賞8本目。
 期待通りに良い作品でした。ただ、画風的に世間での評価はそこまで上がらないでしょう。これは完全に個人的な見解なのですが、邦画はCGを豊富に必要とするアクション映画などにはめっぽう弱いですが、ノワール映画、そしてとある職に焦点をあてたいわゆる「お仕事ムービー」は当たりが多いと思っています。今作も「お仕事ムービー」とまではいかないでしょうが、タイトル通り湯道を志す者、そして田舎の古き良き銭湯屋を愛する者達をシンプルに描いているのでとても良いと感じました。確かに説明しすぎな点もありますし、見せすぎな点もあります。でも自分は十分楽しめましたし、少しウルッとくる場面もありましたから及第点でした。

 とある街中にある「まるきん銭湯」は地元の人に愛されながらも年々利用者が減ってきていた。そんな中、家業を継ぐ三浦悟朗の兄、史朗が実家の銭湯に戻ってくるのだが。。

 そういえば、銭湯なんてもう何年行ってないことやら。昔祖母の家の近くに銭湯があったからよく行った記憶があります。番台に古き良き富士山の絵などなど、もう現代の10代くらいの人達はわからないのかもしれませんが、ギリギリ20代後半くらいからならわかるのではないでしょうか。今やスーパー銭湯が主流となりつつも、家の風呂のクオリティもあがってきているため、このような古き良き銭湯はほとんど姿を消しました。残念ながら、今作に出てくる銭湯は温泉評論家の太田がいう通り、銭湯は「昭和の遺物」なのかもしれません。

 とは言え、今作ではこれでもかというくらい銭湯の魅力が描かれています。面白かったのが、暖簾の下に置かれている「ぬ」と「わ」の板。これは流石に知らなかったので成程と思いましたが、上の世代の方なら当たり前の知識なのでしょうか。湯船で歌を歌うのも一興でして、さすがに歌手のクリス・ハートと天童よしみを持ってきているのはあざといと思いましたが、聴き心地が良いのでよしとしましょう笑 昭和生まれでないのに、妙に懐かしさを感じてしまう今作。そしてどんなものでもやはりそれを守っていこうとする人がいる。この銭湯でもそうです。時代が進み、この銭湯を売り払い、マンションを作ろうという計画が持ち上がりますが、果たしてそういう問題にどう対処していくか。結末はもちろん伏せるとしても、やはり少しでも必要とされていたら残す価値はあるのではないでしょうか。

 今作のメインはこのまるきん銭湯での話なのですが、所々小日向文世演じる横山正が湯道を極めていこうとするシークエンスもあります。これらの展開は賛否が分かれそうですが、茶道や華道と同じように、湯に浸かるのに作法があるとしているのが面白かったです。不必要だ、としたいところなのですが、横山の長年の夢であった「家に檜風呂を作る」というエピソードに繋がるので、ベタな展開でしたが個人的にはみていて面白かったです。このように、まるきん銭湯ではいわゆるある職業の良いところを見せていて、また湯道の方ではひとつの道を極めていく者の生き様を見せていて、この両方が自分にはかなり合ったため良作となりました。

 とは言え、みていて恥ずかしくなるようなベタな描写が多く、また展開も予想できるのでそれ程評価は上がらないと思えます。でも、日頃からたとえばよく銭湯に行っている人や、温泉などに興味を持っている人にはオススメできると思います。お風呂を扱った映画はそうそうなく、『テルマエロマエ』も現実的なものではないため、確かに宣伝通り唯一無二の映画なのかもしれませんね。キャストも素晴らしく豪華。楽しく観れました。今のところ今年の邦画ナンバーワンです。
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