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わたしの魔境のaymのネタバレレビュー・内容・結末

わたしの魔境(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

■ニコ生で鑑賞
有料だからかコメントが少なかったけど、解説的なコメントもありニコ生で鑑賞してよかった。「同じ言葉を繰り返すことで変性意識が生まれる・文言はなんでもよくて繰り返して集中するのが重要」というコメントはなるほど!となったし、これが「バーナム効果」か、とはじめてわかった。レイプシーンなどあるので家族や友だちと気軽に... というわけにはいかないけど、オンライン上で意見を交換しながら鑑賞するのに向いている気はした。トモキマン(YouTuber)やTikTok等の現代的な表現を使ったのはあえてで、令和版として警鐘を鳴らしたかったという感じみたい。確かに、入り口ってとてもライトなところにフレンドリーな人がいたりするから迷い込みやすいなって思う

■総じてインタビューパートがよかった
特に死刑囚の奥様の提供写真が悲しくて美しかった。うっかり上祐氏の発言に納得してしまった自分もいた。(二元論・陰謀論は危険、など...)

■教祖がきれいすぎて残念
俳優さんだなって感じてしまうきれいさだった。ブラック企業の社長さんはい居そうだったのにな...「(信者さんの)肌がきれいすぎる」というコメントも見られたので、もっとおどろおどろしく深掘りして描けたところもあるのでは?と感じる部分もあった。ただ、題材そのものが充分タブーに切り込んでいる系なので、大衆に届けるためにはこのくらいドラマ的できれいめな方が良いのかもしれないとも思った。(リアルがみたい人はドキュメンタリを見るべきなのかも)

■カルトもブラック企業も原理は同じ
バナナとみかんの例えがあったけど、ドラマの中の主人公はブラック企業の環境・行動をなぞっているように思った。ブラック企業にいた時の空気感を思い出しておえっとなった🤮

■脳のバグ
見える子ちゃん的なことは実際にあることだと思うのだけど、心霊現象は基本的に脳のバグであると思う。性的虐待の恐怖とトラウマ、それを隠して平気な顔で暮らすストレス....「霊的体験=脳の性質」という表現など、それに近い話があり腑に落ちた。

■人の死がきっかけになる
自分の親族がカルトにハマったきっかけも「大切な人の死」だった。あの人はどこに行ったんだろう、どこにいるんだろうなど考えてるうちに答えが欲しくなるのはわかる気がする。ドラマの中でも「雨」の例え話があったけど、わたしもはじめて身近な人間が死んだ時、あんな類の妄想をよくしていた。

■危険な前向きさ
この世界は「いっさいの苦であり無常」「薬なしで認知を変えたい」「この世の全ては苦、苦しかない。愛することも憎むことも苦」このあたりの思想には共感してしまうところがあり、ポエム的なもの、神秘的なものに惹かれる気持ちもわかってしまう自分は危ういと感じた。現世の生きづらさから逃れるために行動を起こした結果が凶と出ただけなのであって「まわりは変えられないから自分を変えよう」というのは前向きな発想。現実をよくしようと思って行動しているのになぜかうまくいかない、苦しみから逃げた先にまた新たな苦しみが待っているなんてよくある話...(同じ人間が同じ環境から行動しているから仕方ない)意欲も削がれ、頼る人もいない自殺を考えるようになった人が死なないためにどうしたら良いか、切羽詰まった状況で現状打破しよう躍起になった結果、行動力が仇になるのはとても悲しい。それこそ死んだ方がマシな世界が広がっていることが世の中には多くある。わたしもこの世の中=地獄説は結構信じている。「自己防衛しかない」世の中で、弱った人間に自己防衛って現実的にはなかなか難しい。

■大丈夫
カルトの元凶は社会にあるのだと身につまされる。「先生・お兄さん・お父さんを掛け合わせた人に出会いたい願望」というのが痛いほどわかる表現だったし、ドラマの中の一言目の「大丈夫ですよ」はかなり効いた。そこに辿り着くまでに「大丈夫」って言ってくれる人がいたらもしかしたらその人は本当に大丈夫になってたかもしれない。即決を求める、持ち帰らせない、相談させない、調べさせない、囲い込む、「後戻りしたくない」「信じたい心」につけ込む、「抜ける恐怖」を利用する... などの心理的なアプローチ受けるとなかなか判断材料がなく藁にもすがる思いで行き着いた人間にとっては抜け出すことは困難

■音楽がよかった(Spotify調べ)
・Low Alms - Blissed
・Oran Loyfer - Too Many Steps
・Hashtag - Open Your Life
・Salt of The Sound - Awake My Soul
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