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Tango(原題)のaymのレビュー・感想・評価

Tango(原題)(1981年製作の映画)
4.8
この作品は「オプチカル合成」という合成技術を用いて制作されている。カメラで例えるなら多重露光のような手法だ。
まず、人物をブルースクリーンの前で撮影し、センタークリアマスクを作成・反転し、背景を撮影したものを「オプチカルプリンター」を用いて合成する。この作業を人数分繰り返すことにより、固定カメラでたくさんの人が同じ空間にいるような演出をしているという。現代ではスマホアプリなどで簡単に合成を行えるようになっているが、フィルム時代の合成は大変骨の折れる作業だったことが伺える。
この作品が奇妙に見える理由の1つに登場人物が皆「自分しかいないと思って行動している」点が挙げられる。一見自然に見えて、実は人物の位置が被らないように事前に動線を考えて撮影しているというから驚きだ。また、人物と撮影時の背景のブルースクリーンの境目に出来た輪郭線に味があって良い。滑稽でありながら、賑やかさや寂しさを感じる、言葉がなくとも人生・人の一生について考えてしまうアート的な作品であった。

(補足めも)
・きもさはヤン・シュヴァンクマイエルっぽくてとてもよい
・「ズビグニュー・リプチンスキー」で検索したら「アングスト/不安」が出てくるのだけど何か関係あるのかな?
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