すずき

ヴィーガンズ・ハムのすずきのレビュー・感想・評価

ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)
3.2
小さな肉屋のヴィンセントは良い肉に対する拘りが強い男。
だが妻のソフィーはそんな拘りより、お金を儲ける事を優先して欲しい。
彼女は夫に愛想を尽かしかけていた。
ある日、店を襲撃した過激派ヴィーガンを懲らしめようとするが、誤って殺してしまう。
猟奇犯罪マニアのソフィーは、夫に死体を解体して遺棄する事を提案する。
翌日、解体された人肉をソフィーは間違えて豚肉として売ってしまった!
その肉は美味しいと評判を呼び、夫妻もその肉の味の虜になってしまう…

クセのなく美味しいお肉は草食動物で、肉食動物は臭みがあって不味い。(鶏や豚は雑食だが、家畜の飼料は植物性である)
つまり、ヴィーガンの肉は美味いのだ!
そんな発想から作られた、美食の国フランス産カニバリズム映画。
香港産カニバリズム映画で名高い「八仙飯店之人肉饅頭」はホラー作品だが、こちらはブラックコメディ作品。
解体作業のゴア描写はあるけれど、食肉加工作業のようで、そこまでグロテスクではない。

前半はヴィーガン狩りをしようとするも、右往左往するヴィンセントを描き、後半は吹っ切れて躊躇い無く殺しまくる夫妻を描く。
しかし、そのどちらもなんか…もう少し足りない感じがした。
コメディとしても、人殺し映画としても、アクセルの踏み込みが足りない!
夫妻は完全に善悪の境を踏み外してるんだけど、作品としての善悪の基準はギリギリ踏み止まろうとブレーキを掛けようとしているように思えた。

しかし最も良くなかったのが、夫人のキャラクター。
悪人なのは別に良いんだけど、不快なタイプなのは笑えない。
ライバル肉屋の夫人の方もクズで、そっちは笑えたのだけど。