ヒノモト

福田村事件のヒノモトのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
3.3
「A」「A2」「i 新聞記者ドキュメント」などのドキュメンタリー作品を手がけてきた森達也監督による初の劇映画作品。

1923年に発生した関東大震災直後の混乱の最中に起きた人種差別に起因する事件を様々な側面から描くお話。

事件のことは知らなかったですが、人種差別と部落問題が二重に絡み合い、隠蔽されてきた陰惨な事件を映画として、被害者、加害者を公平に偏りなく描かれていること自体は大変良かったです。

ただし、事件の当事者よりも、そこから少し距離を置いた登場人物がメインキャストとなっていて、そこに割かれる時間も長く、ドラマ要素が色濃くなっていて、事件自体は描かれるものの、物語の落とし所としては焦点がすこしぼやけた感じが残りました。

全く描かれていない訳ではないですが、事件の陰惨さを際立たせるならば、被害者となる行商人をメインに据えるのが最適に感じますし、集団社会の怖さを際立たせたいなら、加害者側に強く関わった人を中心とするなどすれば、よりその事件の異常性を表現できたと思います。

あと、カメラワークも観客が観たいと思うところに、的確にカメラが追いついていない、または少し遅れてカメラを向けるような場面もあり、若干野暮ったさもありました。
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