里紗

福田村事件の里紗のレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
4.8
あまりにも、、重たく冷たく心を抉る作品すぎて言葉にならん。意味もなくただ心の中に恨みを膨らませに膨らませ風船みたいにパンパンにして自分でそれを突いて破る。馬鹿みたいだと怒りがふつふつ湧いてくる。一体何をしているんだと悔しくて悔しくて涙がじりじり滲んでくる。これが実際に起こった事件だと思うと本当に胸が痛い。

関東大震災
戦争
部落差別
そうこれは最悪、、ありとあらゆる「最悪」が重なって出来たどうしようもない地獄。辛くて辛くて見ていたくないのに、全ての人が見るべきだと思える作りに感服しました。涙が止まらん。
讃岐からの行商人がとある福田村へ赴き、朝鮮人に間違われ虐殺される。これが事実であってなるものか、、
この人は日本人だ!と声をあげるのも、だからなんだ、朝鮮人だから殺して良いのか!と声をあげるのもどちらも本当で。思い込みや怒りは人の目を曇らせ無理やり火を焚いたように突き進ませ、残ったものが映るシーンがあまりにシンプルで辛かった。まるで昨日起こったことみたいに、血の匂いまで焼きつきそうな現実。
長谷川秀吉役の水道橋博士のラスト、涙し膝を落とすシーン。あれには絶句した。正義とはこういうものかと、、「信じる」とは掲げるものでも期待するものでもなく、信じているという【状態】の話なのだなあ。それが事切れた時の無防備さに直面したとき、あまりのグロさにドン引きした。正しいと思っていた、の言葉を前に一体何を感じられる自分でいたらいいのか。

また「起こっていない事実は書くべきではない」という真っ当ないち記者の言葉より「でも僕は書かずに起こってしまうことの方が怖い」というにュアンスの返事がなされた時ウワーッもうやめてくれ、、と思ったな。なぜなら少し「分からんでもない」と思ってしまうから、、悪を悪として描いてくれたら、間違いは間違いだけであってくれたらどれ程良かっただろうと打ちのめされた。これもまた彼らがかつての朝鮮人の方々に抱いた思い込みや怒りの蕾に思えてつらい。

「もう何も感じないんだ」と思えども、だからって誰を傷つけて良い理由にもならんのだ、、
里紗

里紗