asobun

福田村事件のasobunのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
-
在郷軍人の力こそ正しいみたいな空気、高等教育を受けた者への妬み、知識ある者は弱腰という根拠のない批判。民主主義は多数決だとい都合の良い解釈。自らのプライドの高さの為に知識者や教育者を否定する。弱い者は更に叩く。そして、自分の行為を正当化し、責任を放棄する。その後の日本が辿った道が示されている様な気がする。軍隊の悪癖が閉鎖的な村にも浸透している事が分かる。   
劇中のセリフの「軍隊ごっこ」からも伺える。

力に支配されてる場で一方的な噂が広まった時に起きる最悪の出来事。普段から差別的振る舞いをしている事の後ろめたさが、不安や憎悪を増幅させ、あらぬ妄想を掻き立てる。それが集団を狂気に駆り立てる恐ろしさ。

その混乱に対してただ暴力に駆られる人ばかりではなく、冷静さと思いやりを持って行動する人たちもいる事の救い。しかし、それが如何に大変であるか。一方的な空気の中で異を唱える事の困難さと勇気。もし、自分がその場にいたら同じ事が出来るかと問いかけてしまう。自分も暴動に加わってしまう可能性すらある。100年前の出来事だが、身につまされる。他人事ではない。

 役者陣も素晴らしく、コムアイは演技初めて観たけど、とても良い。村人の女性たちの日に焼けた化粧気のない肌に色気があって生き生きした感じが良い。東出昌大も線の細い印象だったが野生味があって素敵。山で生活しているだけはあるな。
asobun

asobun