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悪い子バビー/アブノーマルのasobunのレビュー・感想・評価

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予告編やキャッチコピーからは社会派でシリアスな内容を想像。監禁、毒親、DV、性暴力、信仰、猫。結構なハードなワードが思い付き、去年や今年にかけて、そう言った作品を何作か思い浮かべてたが、「悪い子バビー」は悲惨な境遇にありながら不思議と悲壮感のない作品だった。
薄暗く荒んだ部屋で35年間に渡って息子を監禁し、DV、性暴力を続ける母親。
常軌を逸した環境で生活のルーティンが映し出す異常性。正気じゃない狂気の世界。しかし、バビーの好奇心や人懐こい眼差しが監禁という異常性を悲壮感よりも滑稽さが上回りシュール。中盤から監禁部屋から逃れ世界に飛び出し、様々な人々との出会うロードムービーへ。世の中の理不尽さ、ルールを目の当たりにし当惑しつつも、どこか楽しげなバビー。珍道中で出会う女性たちに母の面影を探しす所に、母親からの虐待故の異常な行為なのか、それとも愛なのか?二人にしかわからない関係性。何故、母親と息子はそんな状況に陥ったのか?社会の偏見、差別、厳しさは信仰とは無縁ではないだろう。信仰は人を救うのか、罰するのか、答えは出ないが、社会や人間関係の芯の部分の不確かさや豊かさを信仰が否定、排除、隠蔽し、人間同士を敵対的に生き難くらくしているのではないだろうか?昨今の悲惨な出来事も想起させるシーンやセリフが印象的。信仰に対しての罪の意識はバビーにも植え付けられている。ただ、無垢で好奇心旺盛で人懐こく、優しく力強い眼差しが、信仰による矛盾や歪を暴き、本来の人間性を信仰から解放させていくバビー。後半の知性や優しさ感じさせる様な澄んだ眼差しに惹きつけられる。バビー一家の戯れるシーンが素晴らしい。
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