これは当たりでした。
多くの人間たちが持つ、自らの「当たり前」「あり得ない」の最大公約数のところで社会が成立している傍ら、そこが息苦しいと思っている人も当然いて、息をひそめた少数の細い細い線が繋がったとき、マジョリティをも凌駕する絆が生まれたという内容で……細かく筋は書きません。
吾郎ちゃんが、やや典型的すぎるかなとも思いましたが、マジョリティ代表みたいな嫌な検事役をこなしていました。ちゃんと、イヤーな奴に思えましたから、とても成功していたのだと思います。
そして、意外というと失礼ですが、新垣結衣が表情も身のこなしも、まったく美しくなく演じていて(超褒め言葉です)、それはつまり、本作以外のところで課せられてきた「ガッキー像」を突き放して、それとは無関係に演じていて、彼女の内なる怒りや悲しみがストレートに届き、魂が震えました。
だからこそ、ラスト、彼女が、嫌な検事に対して、大切な人と一緒にいるために大事なことを一言で説くわけですが、大きな社会の「当たり前」や「あり得ない」を作っている方こそ、人としての正道から外れてはいないかと思わせる台詞に、力強さと説得力を感じました。
ガッキーが主演した「逃げ恥」は、たしかにダイバーシティ、結婚のあり方のしなやかな変化といったテーマを描きましたし、それを広く伝えましたが、それだけでわかった気になってしまうのは、実にもったいない。やっぱり映画だからこそ描けるし、伝えられることがあると確信を深めた次第です。
