Mariko

西部戦線異状なしのMarikoのレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(2022年製作の映画)
4.0
大昔1930年版オリジナルを観た時に、まあいつものことではあるのだけどこういう映画なのに全編英語なのが気になっていた。

それもあって、今回これが "Im Westen Nichts Neues" として作られたと聞いて以来チェックしていたのをようやく観たのだけど、いろいろ記憶が薄れているとはいうもののオリジナルとはかなり印象が違う。設定は同じだし強く反戦を訴えた作品ではあるものの、別の映画といって良いくらい違う。しかもオリジナルの圧倒的な力を今更感じた、、とはいえ記憶で語るのもナンなので1930年版を改めて観ようとは思っているのだけど。

もちろんそういう意図であることをわかった上でいうと、今作は緩急がなくひたすらに厳しく容赦ない描写が続く。束の間やすらぎの、またハッとするくらい美しい場面でさえ、うしろには「決して気を緩めてはいけない」と喚起する音が流れている。WWIを描いた作品はどうしてもそうなるであろうし、そういう時代だったのだ、ということを強く主張したいがゆえのここまでの冷徹さで戦争の理不尽さを描くのは非常に価値のあることだとは思うけれど、ふわっとしたものがあることでより厳しさが際立つ、という効果についても考えたくなった。
これは、今作が良くないということではなく、この時代にあらためて多くの人に観られるべき映画であることは間違いない。

オリジナルを観たら、たぶん追記する(予定)


(その、追記)

1930年オリジナル "ALL QUIET ON THE WESTERN FRONT" を改めて観ると、やはり今作、オリジナルとの差を出そうとしたからか、わかりやすいといえばわかりやすいのかもしれないけれど、本来の"Im Westen Nichts Neues"(「前線に報告すべき件ナシ、」という司令部報告、から取られている)というタイトルが放つ主張が少し薄れたのかもしれない。

1930版のレビューにも書いたのだけど、あちらでは上層部が登場しないことで、前線の実態をお偉方は把握せずに戦況だけがどんどん悪くなっている(=死者が増える一方)事実が際立つのだけど、今作はそうではない。特に最後のエピソードは目を覆いたくなるようなドラマではあるけれど、タイトルと矛盾してないか? と改めて思ったり。
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