ゆず

葬送のカーネーションのゆずのレビュー・感想・評価

葬送のカーネーション(2022年製作の映画)
4.5
老人と孫と棺のロードムービー。説明は極力省かれ、寡黙な二人の旅で聞こえてくるのはラジオから流れる声や出会う人々の言葉ばかり。老いた男は笑うことも泣くこともなく、黙々と妻の遺体を運んで故郷を目指す。退屈な映画だが、物語の背景を知ると老人の抱えていた想いの価値が分かる。

老人と孫はもともとシリアの住人だったのだろう。それが情勢不安のためトルコに逃げてきた。しかし老人は妻を故郷に埋葬するという約束を果たすために再びシリアとの国境を目指している。
この背景を知った時、この物語はある老人と孫の話ではなく、誰しもに起こりうることを描いた普遍的なものだと気付かされる。乱暴に言えば、「自由」について語った映画である。寡黙な老人は自由のために闘っていたとも言える。
自由を奪われてもなお、自由のために闘うことはできる。そんなメッセージを受け取った気がする。
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