ツクヨミ

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のツクヨミのレビュー・感想・評価

2.9
あみだくじのように絡み合い解かれる恋愛群像たち。
"はちどり"を撮ったキム・ボラ監督がとある雑誌でオールタイムベスト1に"ヤンヤン夏の想い出"を挙げておりエドワード・ヤン監督には多少興味を抱いていた、まあ作品は違うが上映していたので勉強がてら見に行ってみた。
まずオープニング、ダイアローグとセリフ.登場人物の大混雑模様に初っ端面食らう。最近見たゴダールの"右側に気をつけろ"のオープニングぐらい情報量多すぎて笑った。
まあ最初はとある会社を舞台に説明なく人間関係を徐々に分からせるスタイルで見せていく、誰が誰で正直分からないんだが中盤辺りまでくるとなんとなく人間関係を頭の中にゆるりと構築できている自分にびっくりだろう。そしてメインとなる話はタイトル通り恋愛関係を主軸にした人間関係の経過を眺めるドラマになっており、やはりというか会話劇が主なパワーだろうか。
また今作の肝というか肝心な面白さはやはり群像スタイルな脚本と編集にあり、同じ年に公開されたタランティーノの"パルプフィクション"なんかもあって90年代前半は群像劇が流行ってたんかなーって感じた。恋愛を主軸にした別れと出会いがドラマティックに描き出され、ちょっとしたショックを与えたりすれ違いで笑いを取ったりと上手い脚本力に拍手したくなる。しかし群像スタイルが仇となったか人間関係の深掘りがあまりできずサラッとした見やすい恋愛ものという印象が良くも悪くもあったのは確か。
あとビジュアルとしてちょっとした構図美や夜の描き方がけっこう美しくて良かったかと、エドワードヤン監督の作家性は分からなかったが群像劇として普通に面白い作品だった。
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