いの

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版のいののレビュー・感想・評価

3.8
「偽善」と「善」には違いなんてなく、人から良い人に見えるのは果たしてそれは良い人の「フリ」をしているのかといったらそんなこともなく、もしも良い人に見えるように良い行動をしていたならそれはやっぱり「良い人」ということなのだと思う。私は自分自身に対してもそう言いきかせたい。これは「フリ」なのか、それとも「本当」はどこかにあるのか。それを探したってどこにも見つけることなんて出来ないけれど、みんな人と人との間にそれを探そうして必死ってことなのかな。ここに出てくる人たちが皆薄っぺらく見えるのは、それはわたし(たち)が薄っぺらいからに他ならない。作家先生が「僕だけが君を救うことができる」なーんて言ったって、それをコメディにしか受け取れない私がいる。


登場人物たちは皆よく喋るけど、伝えたいことは言葉では伝わらない。よく喋るのはきっと伝えられないからであって、自分の言葉が薄っぺらいとわかっているからであって。お願いだからけたたましく怒鳴るのだけはやめていただきたいと私は思ってしまったのだけれど、それは相手を責める言葉だけは確信をついた真実の言葉のように感じて突き刺さってしまうからなんだと思う。夜の風景が染み入る。煙草から煙草に火をつける場面もいいね。ラストシーンは、言葉じゃなくて感情で、わかる気がするんだ。


チチの恋人ミンが若い頃の濱口竜介にそっくりのように思えてきて、ミンを濱口竜介、作家先生をエドワード・ヤンだと妄想しながら観てしまって楽しかった。タクシー追いかけて最速で走る姿とか、なんだか色々笑わせてもらいましたすみませんっ。名作と名高い牯嶺街も恐怖分子も映画館でほぼ寝ているわたしは、これまでの自分を猛省し、今回十分すぎるほどの睡眠とったうえでのぞんだ結果、ノーウトウトでいけました。やればできるんだぜっ
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