本日8月29日は20世紀を代表する大女優イングリッド・バーグマンの誕生日であり、そして命日でもあります。
67年間(1915~1982)に及ぶ生涯の中で、公私共々常に話題の絶えぬ女優生活を送った彼女。
中でもやはり一番のスキャンダルといえば、イタリアの名匠ロベルト・ロッセリーニ監督との不倫が挙げられるでしょう。
ハリウッドで築き上げた人気と名声、そして愛する家族を捨ててまでもロッセリーニの元へ走った彼女は、
世界的女優である以前に、ひたすら愛に生きる一人の女性であったと云えます。
しかしロッセリーニとの結婚生活はそう長くも続かず、
ロッセリーニ自身もネオレアリスモの代表格「戦争三部作」以降は徐々に精彩を欠いていくことに。
本作「イタリア旅行」は謂わばそんな二人の夫婦生活の状態を赤裸々に吐露した作品であり、
すれ違う倦怠夫婦の本懐と意地っ張りな愛こそがバーグマンへ宛てたロッセリーニの切実な想いだったのでしょうね。
修復不能にまで陥った二人の溝は、イタリア・ナポリの魅力的な観光名所と対比して深刻化していきますが、
それはもはや必然的であり不可避な通過儀礼によってその真価が試される瞬間は必ず訪れます。
ラストは「天井桟敷の人々」へのオマージュが少なからず込められているのかも知れません。
その後あの立派な別荘はどうなったのか。
できれば、売らずに二人の終の住処になっててほしいです。