ルイまる子

1976のルイまる子のレビュー・感想・評価

1976(2022年製作の映画)
3.9
東京国際映画祭、丸の内TOEIにて視聴。ピノチェト政権下のチリ。独裁政権の様子を見に行ったつもりだったが、全くそういうあからさまな政治的抑圧とかではなく、別荘に訪れた中年というか老年に差し掛かったきれいなブルジョア女性が、勇気ある行動を取るストーリーだ。革命家を秘密裡に助けるのだが、彼女の行動がいつ当局に見つかるかヒヤヒヤドキドキする。映画視聴後、監督のQ&Aがあったが、マルテッリ監督は若くきれいで、映画好きな人達からのgoodな質問で、なかなか中身のあるQ&Aで大満足した。ペンキのピンクに赤を入れるシーンから始まり、最後の方にも同じようなケーキのクリームに赤が入るシーンがあるが、あれは血の意味だそうだ。そして、音楽が終始気味悪い効果となっていた。私的に興味深かったのは、フェミニズム的な描き方だ。昔は医者になろうとしたが封建的な家庭に育ち叶わず、今は主婦でお金持ちの医師の妻で、時々朗読の仕事をしているらしい。夫から意地悪な発言がちょいちょい見られる。彼女があまりシャープでない、アホだよ、ウチの奥さんは、みたいな言い方をする。夫からそういう扱いをされていたからこそ当局にバレずに済んだのだろうがね…革命の一部の手助けは、勇気ある行動で、彼女らしい本当の自分の発露だったんだろうな。表現の自由は出来ず、チクられるので他人が信用できず常にピリピリとした雰囲気が伝わる。海に上がった女性の死体は活動家だったが、それも単なる「外国人の女性」と新聞報道されていた。革命家と彼女の会話も良かったけど若干そのあたりの人間関係の描き方が浅かったかな。サスペンスに重きを置いた作品に仕上がっている。
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