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エリザベート 1878のnere795のレビュー・感想・評価

エリザベート 1878(2022年製作の映画)
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映画には、鮫モノっていうジャンルがあって、本家Jaws以来、綿々と手を変え品を変え、作られてるわけだが(てか今も、2本、1つはB級、も一つは、メジャー版)、皇妃エリーザベトも、エリーザベト・モノっていうジャンルがあるっていいっていいぐらい、映画にミュージカル、どんだけっていうぐらいに作られ続けている訳

シッシの愛称で、ポーランドを愛し愛され…、うんぬんかんぬん、悲劇の、あるいは、DI(ディー)の愛称で知られた、つい最近のレジェンドとの比較で、あるいは、日本人に多い、ハプスブルグ帝国への憧憬(婚姻関係により、私益の極致である帝国をつくりあげたあげく、ヨーロッパ諸国での大戦を引き起こし、今のバルカン半島の政治の不安定さとか、イスラム移民の原因をつくった、諸悪の根源、非民主主義の典型である、ハプスブルグのどこに理想化し憧憬を求める余地があるのか理解に苦しむが、少女漫画的あるいは、NHKの娯楽番組的には、ハプスブルグという言葉はそれだけで、中年のおっさんおばさんの心をとらえて離さないのかもしれん)…、そういったもろもろの要素を背景として、エリーザベト・モノは、ある

作品がゴロゴロ・ゾロゾロ出てくる以上、何か差別化しなきゃいかんのは、商売の常道、ってことで、この作品では、ある1年だけを切り取って、なんかすごく彼女の内面本質に斬り込んでる感を醸し出した、ていうことなんだろう

ただ、基本、エリーザベト自身が、そんなに教養に富んでたとか思索深かった訳でもないので(異常に美容には手間暇と金をかけたぐらい)、いくら掘り下げたところで、出てくることはあんまりない
つまり、素材が悪いので、どう料理しようが、あんま感動とかには結びつかない気がする

エリーザベトの苦悩っていっても、恵まれた生活でのそれなんであって、別に彼女に限らずどこの王室でも「多忙なご公務」とか「ご苦労が偲ばれる」とかってのがありうるわけだが、同時代の底辺層どころか、国民の大多数の生活ぶり、特に戦争やってる地域の住民の苦しみに比べたら、「コルセットで締め付けがキツイの…」っていう「ご苦労」に果たして共感を感じることができるのか? もしできるというのなら、少女漫画とかミュージカル()で、お姫様白馬の騎士のおとぎ話に自分を同化できるような特殊才能がないとムリだろ

しかも、コルセットをやらされてるっていう認識でこの作品を作ったとすれば、そもそもが史実に反するので、エリーザベトは、好き好んで美の道にはまっていった、そのあたりは、きちんと踏まえてもらいたい
彼女にとって、美しくありたいのは自己愛であり、国民からどう思われるかなんてのは微塵もなかった、少なくとも二次的でしかなかった ハンガリーへの思い入れは、嫌々嫁ぐ結果になったハプスブルグという巨大組織への反発であり、それはDIの晩年において、彼女がイギリス王室となるべく無関係なボランティアに精を出したのに類似している 

とにかく、もういいかげん、ハプスブルグとかいうマジックワードから目を覚ましたどうなんだ?っていう契機になれば、この映画の存在意義もあろうかというものだろうなぁ

あと、無理無理に、ジェンダーに結び付けて解釈しなきゃいかんの?って思うんだがな こんな、もとい、この作品でも、もし満足できたのならそれでよし、エリーザベトっていう人の存在知りました、面白かった、でいいんじゃないのか? コルセットってのは、確かに女性解放の象徴として例えば、ココシャネルあたりで扱われることになるわけだが、そんなのココで読み込むかな? 映画ごときで「学んだり」してどうするっていう気が笑 

女性を扱うなら、ジェンダーコンシャスじゃないと…あたりの縛りはハリウッド映画だけにしてもらいたい 
今に、扱うならメス鮫にしろ、とか出てくるかもだが
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