らっとちゃん

梟ーフクロウーのらっとちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

梟ーフクロウー(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

見えないからこそ簡単に見なかったことにできる宮廷内の出来事、見えないからこそ見えたひとの優しさ。
世子が毒殺されるシーン。状況がわからないまま治療にあたる中で、瞬間光の落ちた闇の中で見えた光景のおぞましさ。
真実を知った主人公が夜の闇の中を追い立てられるように逃げるスリル。朝日が昇る前にと子どもを負ぶって走る懸命な姿。
賢く目を閉じて生きてきた主人公が「このまま目を瞑ったまま生きるのか」懇願され、脅され、決断を迫られる。
まさに『梟』。タイトルから内容、描写まで強い筋がしなやかに通っていて、身は隙のない面白さ。創作物として「美しい」と形容したくなる出来栄え。

主人公の"見える"演技の説得力のすさまじさ。演出もあるだろうけど、説明がなくとも瞬間に理解できるその表現のパワーに感心した。
宮廷の偉い人達の腹の底の見えないこと。
王はコメディの人と知ってびっくりしたけど、だからこそそこはかと感じられる愚かさというか、堅王ではないことがひと目でわかる。でも怖い。
俳優さんたち素晴らしかったね~!

主人公が夜の闇の中を追い立てられるように逃げるシーンは本当にスリリングで、最後列で周りに人がいないのを良いことに手で顔を覆いながら目のとこだけ開けるスタイルで観てたし、
誰が組んだとか誰の企みとかじゃない、誰かの思いに報いたいという純粋な気持ちが語らずとも伝わる王と主人公の対峙から、朝日の中ひとり目の見えない主人公だけが「私が見ました」と訴えるシーンの切実さ。まさにカタルシス。

歴史物フィクションで、こんなにミステリーでサスペンスでドラマが出来ちゃうんだ!?まじで飽きない2時間だった。本当に面白い。素晴らしい。