幽斎

カタコンブ 地下墓地の秘密の幽斎のレビュー・感想・評価

3.6
恒例のシリーズ時系列
2007年 4.0 CATACOMBS「カタコンベ」アメリカ映画
2011年 3.6 Urban Explorer「アーバン・エクスプローラー」ドイツ映画
2014年 3.8 As Above, So Below「地下に潜む怪人」アメリカ映画
2022年 3.6 Deep Fear「カタコンブ」本作、ベルギー、フランス合作

地下20m、全長1.7km、600万人の遺体が眠る世界最大の地下墓地。ソコには足を踏み入れてはイケない禁止区域が・・・。友人宅のWOWOWジャパンプレミアで鑑賞。

「Catacombes de Paris」パリの地下納骨堂、日本では「カタコンベ」で知られる。正しくは「l'Ossuaire Municipal」市営納骨堂で一般公開され本物の骸骨を観る事が出来る人気スポット。カタコンブとカタコンベの違いは英語は「Catacomb」カタコーム。ドイツ語はカタコンベ、フランス語はカタコン「ブ」。私の住む京都にも観光名所で有名な東本願寺には東山浄苑が有り、キリスト教など宗派を問わず地下1階~3階の回廊で繋がる3万基の納骨墓所が在る、立派なカタコンベ(笑)。

意外な事にカタコンベを題材にした母国フランス映画は少ない。ソレはパリがナチスに占領された忌まわしい過去の為。第二次大戦中、レジスタンスに加わるパリ市民は地下トンネルに避難。ナチスに占領されると、ドイツ兵はカタコンベにブンカーを築いた。ブンカ―とはコンクリート製の防御陣地。2007年にアメリカ映画が公開されると、観光客が押し寄せ内部を荒らされる事件が相次いで公開中止。懲りずに「アーバン・エクスプローラー」宿敵ドイツのナチスが遺した地下墓地を描いたホラー。満を持して本作は本家フランス映画、ベルギー配給作品。

2007年「カタコンベ」Filmarksの評価は低いが、私は結構楽しめたスリラー映画。実は生涯一位作品「SAW」生みの親Gregg Hoffmanプロデュース。しかし、謎の心臓発作でSAWの成功を見る前に死亡した曰く付き。しかも音楽は日本が世界に誇るYOSHIKI。レビュー時点でAmazonプライム299円、本作より断然お薦め(笑)。二番煎じの「地下に潜む怪人」POVのみが新しく、カタコンベに較べると禍々しさに欠ける。Amazonプライムで400円、お化け屋敷要素が楽しめるなら悪くないチョイス。

本作は「アーバン・エクスプローラー」どっこいどっこい。フランスのホラーの地盤沈下を嘆きたく為る。得意のグロ&スプラッターは頑張るも、イントロダクションが間延びし過ぎ、コンビニのカフェオレの様な薄味。同じソリッドシチュエーション、同じフランス映画の傑作スリラー「THEM ゼム/正体不明」的なテイストだが、フランスのミステリーのフォーマット通り起承転結は放棄。祖国の意地を掛けた本作も、相変わらずネオナチの造形がスキンヘッドと笑わせるが、肝心のクライマックスをアメリカのホラー映画の象徴でお茶を濁すのは、映画発祥の地の気概は無いのかと憤慨。一番の問題点は汚れた地下通路のみで肝心のカタコンベが出て来ない件。
【HISTORY】www.youtube.com/watch?v=4CfazQ2P8D8

私の住む京都も1200年の歴史ある街で、当然心霊スポットは沢山有るが、素人にはシャレに為らない場所も多く、ネットで検索しても出て来ない。どうしても、と言う方は友人の僧侶同伴で行かないと身の安全は保証できない。地下の閉塞感と言えば「ディセント」洞窟映画はメジャーだが、医学的に言えば〇十年も地下に居るのに、何でド―ベルマンの様に骨が強いのか疑問しか無いが、ソレは野暮(笑)。私の様なスリラー派は伏線の回収が放置プレイなので減点。ホラー派は怖さのブレイキングが面白いと加点。評価出来るのは地獄の地下と天国の地上とのアンジュレーション。何気ない日常の生活が美しいと思えるエンディングに辛うじてフランス映画らしさを感じた。本作が未体験ゾーンの映画たちに呼ばれなかった理由が、何となく判る気がした。

カタコンブ=堅昆布、出汁がタップリ出る筈なのに中身はダシガラ、じゃないわよ(笑)。
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