幽斎

トランク ~走る密室~の幽斎のレビュー・感想・評価

トランク ~走る密室~(2024年製作の映画)
3.8
【Amazonスタジオ作品シリーズ】原題「Trunk - Locked In」ドイツ映画なのに英語(笑)。AmazonPrimeで0円鑑賞。

Hollywoodでも№1の名門MGM Metro-Goldwyn-Mayerを買収したAmazon MGMスタジオ制作。「007」をUniversal Studiosに獲られ万事休すのMGMを救ってくれた事は有り難いが、名門に配信映画を創らせる、レジェンドに対する尊敬の念は無いのかと、栄枯盛衰を京都人の私が嘆いても仕方ない(笑)。許せるのは下請けが優秀なドイツのOutside the Club制作、言語も英語とドイツ語が混在する。

クオリティはハッキリ言って劇場公開しても遜色ないのは流石MGM、低予算に負けず意地を魅せる。ドイツのMGMと言えば、Amazonの配信映画の量産工場として要注目。スリラー専門の私から見れば「車のトランクに閉じ込められる主人公」モウ、何度見た事か(笑)。代表作はメジャーに成る前のRyan Reynolds主演「[リミット]」。「ブレーキ」Stephen Dorff主演、プロットより俳優の優劣で決まるのが、ソリッドシチュエーションなので、閉所恐怖症に問題無ければ、観てソンは無い。

最大の特徴は超低予算で創れる。本作も主演Sina Martensひとり芝居、キャストも最小限で済むしロケも必要ない。問題は96分間、緊張感を持続させる脚本。ドイツ人Marc Schießer監督デビュー作だが、空間を限定する事は出来る事も限られる訳で、プロットも早々に行き止まりに為るケースが殆ど。だが、本作は面白さを毀損しない様に、狭い為りにも絵的にも地味に為り過ぎない工夫が凝らされ、緊張感がダレる事も無い。

悲しいかなドイツ映画なのでミステリー的なロジックは穴だらけ。誰かを誘拐して真っ先にする事はスマホを取り上げ捨てる、位置情報は勿論だが、犯人への証拠と為るアイテムを放置するのはマヌケ以外の何者でも無い。案の定「麻酔したけど目を覚ますのか?」呑気な事を言ってるが、拉致したなら拘束ぐらいはするよね、普通(笑)。

ミステリーがド下手なドイツらしさ満載ですが、内臓を抜くとかアメリカ映画には無い、ソッチからの攻めは流石はドイツ、人体損壊には抜かりはない(笑)。プロットはザルのオンパレードでも、痛々しい描写の数々は人を痛め付ける事が大好きなドイツ人らしさも感じた(異論は認める)。悩ましいのはオチの付け方。彼女はトランクに有ったカメラに遺言を残すが、ソレが彼女の生死を観客に委ねるスタイルに変化。居眠りせず正しく鑑賞してれば、此の時点で彼女が生き残る分水嶺は分かる。故に監督は最後のワンカットは、本当は入れたく無かったと思う。スタジオに配慮して押し切れない。まだ、ドイツのスリラー映画は発展途上と感じた。

ドイツらしく車に対する知識は流石、AmazonのMGMドイツは熱いので、お暇でしたら。
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