自由への道
久々にウィル・スミス主演だ。
そして、実話映画であり、アメリカ南北戦争時代の黒人奴隷(二グロ)たちの命がけの物語だ。
全編を通して、ほぼモノクロに近いロートーン映像で描かれており、非常にリアリティがある。
そして、あの有名な、鞭を打たれた奴隷の写真の被写体となった黒人奴隷をウィルが演じている。
アメリカ南部の諸州では、黒人に対する感覚が、今なお北部諸州とは大きく異なっていると聞く。
そもそも南北戦争自体の発端と目的は、黒人奴隷制度の存続を求める南部諸州と、奴隷制度廃止を求める北部諸州との内戦だ。
ゆえに、その戦いに敗れた南部諸州の人々としては、納得ずくめで奴隷制廃止に賛同したわけではなく、北部により力ずくで奴隷制廃止を強要された形となったことは、本来の在るべき形ではないのであろうな。
なぜ黒人を奴隷として扱いたいと願うのかは、我々日本人には全く理解は出来ない。
だが、南北戦争時代のアメリカ人たちにとっては、黒人=奴隷=虫けら=いつでも理由なく殺しても良い者たち、という文化が常識としてまかり通っていたのだから不思議だよ。
民主主義思想とは何を指しているのであろうか、と、根本的な部分に疑問を抱かざるを得ない、矛盾だらけの民主主義時代だったのであろうな。
さて、映画自体に関してだが。
ウィル・スミスの激痩せぶりは目を見張るものがあったよ。
途中からは、主人公の黒人が、もはやウィル・スミスには見えなくなってくるという点も、役作りの賜物なのか、演技力の結果なのか、あるいは特殊メイクの威力なのかは私には分からないが、ともかく、彼の演技は見事だったよ。
この映画を観ていると、彼のアカデミー除名が痛かったなぁ、と惜しく思うよ。
戦いのシーンは本当にリアルだったよ。
一瞬で死んでゆく兵士たちの姿や、銃弾や砲弾が飛び交う戦場での命の儚さを実に見事に描いていたように思う。
総じて、素晴らしい映画であったと私は感じたよ。
ただし、唯一の惜しい点としては、ベン・フォスター演じる黒人奴隷狩りのリーダー役が、奴隷制云々とは何ら関係がなく、単なる猟奇殺人鬼だった点はいただけないな。
要らんよそんな設定は。
テーマがボヤけてしまうよ。
他は言うことが無い映画だった。
以上だな。