むらむら

オペレーション・ゴールドのむらむらのレビュー・感想・評価

オペレーション・ゴールド(2023年製作の映画)
5.0
ステイサム映画を観て、

「他にハゲの活躍する映画はないのか……」

と、覚醒剤の禁断症状になったときのようにブルブルと体を震わせていた俺の前に、現れたのが作品。超大物二人がポスターで燦然と眩しく輝いているではないか。

さっそく猛ダッシュでシネマート新宿へ。あやうく「ハゲロス」に陥りそうな俺の駆け込み寺となった。

二大巨頭の共演、しかも先日役者引退を発表したばかりのブルース・ウィリスの勇姿には感動したものの、話自体は結構、薄かった。

※いきなり「輝く」「ロス」「駆け込み寺」「巨頭」「薄い」など、「ハゲ」を連想させる言葉が多めの感想ですが、今回もハゲのことばかり書いてます。ご了承ください

ハワイで麻薬組織を捜査していた賞金稼ぎのイアン(ブルース・ウィリス)が、銃撃戦で死亡した。その報を受けたイアンの息子ライアン(ブレイク・ジェンナー)は、イアンの元相棒である賞金稼ぎのロビー(スティーヴン・ドーフ)と共に、背後の真相を探る。そこに浮かび上がってきたのは、「パラダイス・シティ」と呼ばれる先住民区を再開発しようとする麻薬王バックリー(ジョン・トラボルタ)の姿だった。

冒頭3分でブルース・ウィリスが死んでしまったので、「ま、まさかハゲ二人はトゥーマッチだから殺されてしまったのか?」とビビってたら、ちゃんと中盤以降、復活してのびのびと活躍してくれる。毛根だと、こうはいかない。

冒頭に書いたように、話としてはイマイチ、光るところがない。理由を3本くらい並べておく。

1.味方が多すぎ

90分強の作品なのに仲間を出しすぎたおかげで、やたら味方が多い。ライアンとロビーはもちろん、途中から「実は生きてた」で登場するブルース・ウィリス、巨乳でメチャクチャエロい警官のサバンナ(プラヤ・ランドバーグ)。それに加え、地元のガールズバーの女性たち全員、先住民の一団、果てはトラボルタの用心棒までが味方になって、「打倒! トラボルタ!」で団結していく。

味方が多くてもいいんだけどさ、クライマックスでトラボルタの屋敷に潜入するシーンとか、7人くらいでゾロゾロと潜入してるの、さすがに緊張感なくない? 修学旅行かよ。

しかも最後トラボルタが逃げようとするとき、お供一人もいなくなってるし。

トラボルタの人望と頭髪が無さすぎで泣けてしまった。やっぱ部下たち全員、髪の毛フサフサのフサ族だったから、裏切られちゃったんだよね……涙。

2.話が都合よすぎ

上に書いた「街のみんな、全員仲間!」以外にも「ええーっ、都合よすぎ」って展開がそこかしこに見受けられる。

・ 10階からプールに飛び降りて、「むむっ、浮いてこないぞ」ってスナイパーに索敵されてるのに、フツーにプールサイドでボンヤリしてるライアン。

・ ブルース・ウィリスが死んで、誰も発見できなかった遺留品の携帯を、オッパイが魅力的なエロ警官が探したら一発で海から発見。

・ 「あの難攻不落の屋敷に潜入するには……『トロイの木馬』作戦しかない!」と啖呵を切っておいて、フツーに運転手に変装して正面から屋敷にすんなり潜入するライアン。

特に巨乳エロ警官、ライアンと一緒に海に遺留品を探しに行くとき、ものすごい派手派手な真っ赤なビキニ着てて、「このままグラビア写真集の撮影でも始まるんか?」っていう、ものすごい緊張感の無さ。お前、仕事しに来てるのか、バカンスに来てるのか、はっきりしろ!

あと話とは関係ないが、ブルース・ウィリスもトラボルタも、息子役が髪の毛フサフサなのは、

「ハゲが多すぎると混乱する」
「ハゲが多すぎると画面がまぶしい」

からだと思うが、若干の都合良さを感じた。だからといって、「実は養子だった」といった伏線もなくモヤモヤ。

3.CGがショボすぎ

せっかく豪華スターを揃えてるのに、「特殊造形」「CG」「スタント」、すべてにおいて「これ、笑わせようとしてるよね?」としか思えないやっつけ仕事。

具体的には以下のシーン

・ 【特殊造形】サメに頭部を食われたって設定のブルース・ウィリスの死体が、B級ゾンビ映画以下の作り物感

・ 【CG】トラボルタが自分に歯向かう先住民を火口に落とすシーン。「ダイ・ハード」でアラン・リックマンが落ちていくシーンから30年経って、アラン・リックマンが髪……いや神見えるほどのショボい合成CG

・ 【スタント】トラボルタが運転してた船から海に飛び込むシーン。「待ってました!」とばかりに素早く飛び込みすぎて、予知能力者としか思えない。あと飛び込みフォームが良すぎてスタントバレバレ

などなど。

■みどころシーン

とはいえ、要所要所に、気に入ったシーンもある。

詳述は避けるが、「フェイス/オフ」をオマージュしたようなトラボルタの正体、「クリスマスじゃないんだから」という明らかに「ダイ・ハード」を意識したブルース・ウィリスの台詞。無意味に挟み込まれる先住民との「ロウリュウサウナ」対決など。

なかでも俺が気に入ったのは過去回想の

「ブルース・ウィリスが酒を奢ることでトラボルタに近付こうとする」

シーン。

遠くの席に座ってるハゲ(ブルース・ウィリス)から「あちらのお客様からです」と酒を奢られて困惑するハゲ(トラボルタ)。

しかし

ハゲ同士は惹かれあう

の格言どおり、
(「スタンド使いは惹かれ合う」の口調で読んでください)

なぜかハゲ(ブルース・ウィリス)を呼び寄せるハゲ(トラボルタ)。

割って入るトラボルタの用心棒(フサ)を、

「ハゲとハゲの間に入ってくるんじゃねぇ、このハゲ! いやフサ!」

とばかりに、影でボコボコにするハゲ(ブルース・ウィリス)。

その後、ハゲ二人で密談。

この二人の共演を見るだけでも眼福。ハゲが二人並ぶので、若干スクリーンが眩しかったが、引退するブルース・ウィリスへの俺の涙が、よい遮光になって、なんとか観届けることが出来た。

いろいろと書いたが、とにかく、ブルース・ウィリスの演技を観られる機会も少ない中、ちゃんとアクションしてくれるこの作品は、ブルース・ウィリスファンにとって大事な作品となることは間違いない。

それはともかく、この作品の原題は「パラダイス・シティ」。

トラボルタが再開発しようとしている先住民区の名称なので、原題は理解できるのだが、邦題の

「オペレーション・ゴールド」

の意味は、最後まで分からず……ゴールドなんて出てこないし。

もしかして配給会社が

・ステイサムの「オペレーション・フォーチューン」→ハゲ1人

・ブルース・ウィリス&トラボルタの本作→ハゲ2人

ってことで、物量作戦で推そうとしたのか? ゼロはいくら掛けてもゼロなんですけどね……。

ただ、二人が共演しているシーンは、それ自体が眩しすぎて

「あぁ、これがタイトルの『ゴールド』なんだ……」

と妙な納得をしてしまったのでした。

(おしまい)
むらむら

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