このレビューはネタバレを含みます
主演のマイケル・B・ジョーダンが初めてメガホンを取ったシリーズ第3弾。
一部劇場にておまけで付いてくるオリジナルアニメから伝わってくるようにマイケルBってああ見えて(?)結構なアニメ好きらしいんだが、そう聞くとそんな彼の嗜好性がそれなりに反映されてる気になってくる「マンガやん」なノリが支配的な1作。
すなわちストーリー面はインパクト重視のざっくり風味で、キャラクターの言動は記号的...って書いててそうじゃないマンガやアニメ、いっぱいあるなと思い直したり。ま、あくまで「概念としての」だと思っていただければ。
で、ですよ。これまでの「ロッキー」及び「クリード」シリーズがどうかと言うと、ことボクシングに限っては映画的ケレンを優先したフィクショナルな表現が目立つものの、それ以外の人間ドラマはその対極と言ってもいいリアル路線で一貫してるんですな。
そこに俳優たちの名演が乗って、もはや実在の人物に感じられるぐらいの確かなキャラクターに昇華している。これがこのシリーズ最大の強みだと思うのですよ。
なんで今回は大きいところから小さいところ、新規要素からこれまでの流れに関することに至るまで、とにかくお話部分の粗が気になって気になってしょうがなかったってのが、シリーズファンとしての正直な気持ちです。
まず本作に限ったことで言うとMCUの新たなボスヴィラン、カーンでお馴染み、ジョナサン・メジャーズ演じるデイムさんと主人公・アドニスのエピソード。これはメジャーズの演技もあって確かにグッとはくるんですよ...途中までは。
でも専らストーリー上の都合で唐突にヒールターン、からの戦った後は何事もなかったかのようにベビーターンってのは2時間の劇映画の中で起こる展開としてはあまりに慌ただしいっしょ。
あとアドニスと敵対して以降のお仲間さんたち、あれどっから沸いてきたん?
パーティーでウェーイの有象無象はまだいいとして、セコンドとかトレーナーとかスパー相手とかどこのどなたさん?てかデイムさんにどこにそんなコネあったの?
デイムさん関係で言うと散々焦らしといて脱いだら見事な肉体美!なのに特に盛り上げもせずあっさり見せちゃってるのも勿体ないと思いました。メジャーズもせっかくあんなバキバキに身体作ったのにあれじゃあねぇ...
そしてシリーズファンとしてそれ以上にモヤモヤするのがぞんざいにもほどがある過去作要素の扱い。
まず何と言っても結局ロッキーどうなったのよ?
別に出さなくてもいいけどさぁ、なんか生死すら判然としないんですけど!
生きてるにしろ死んじゃったにしろ触れるポイントいくらでもあったのにまったく思い出しもしないってアドニスもビアンカも冷たすぎない?そのスルーっぷりが不自然すぎて前作の後、疎遠になる出来事があったの?とか気になってしょうがないんですけど。ちょっとしたセリフで軽くエクスキューズしといてくれれば余計なこと考えずに済んだのに...
ドラゴもさぁ、息子出すんなら親父どうしてんのか、教えてよ!ロッキー同様「ただ不在」って不親切すぎるでしょ。
で、それ以上に気になるのがメリーアンの実子(息子&娘)って結局どうなったのよ?
「クリード」1作目では「アポロの死によって家族はバラバラに」としか説明されてなくって、なんなら今後の伏線?とか思ってたんスけど、メリーアンの葬儀をあっさり処理しちゃってそのへんまったくわからずじまい。
事前情報入れてなかったもんで、今回てっきりリアルクリードを巡って腹違いの兄と戦ったりするのかと思ってたりしたんですが。
音楽も結構微妙なんだよなぁ...と、どうにも不満が噴き出してしまう、残念な新作でした。