こなつ

オットーという男のこなつのレビュー・感想・評価

オットーという男(2022年製作の映画)
4.0
いつも不機嫌な顔で毎日パトロールしてゴミの出し方が悪い、駐車の仕方が違う、と説教ばかりしているオットーのようなお爺さんが近所に住んでいたら、変な人だから近づかない方がいいと普通なら避けてしまうかもしれない。

しかし、近くに引っ越してきた若い家族は、そんなことなどお構い無し。陽気で人懐っこい、メキシコ出身のマリソルは超お節介。オットーは、いつしか彼女のペースに巻き込まれ、彼の人生まで大きく変えてしまう。

最愛の妻を亡くし、仕事も失い、生きる希望のない不幸な日々を送っていたオットー(トム・ハンクス)。あの手この手で何度も妻の元に行こうと自殺を試みるのだが、その度にマリソルに邪魔される。タイミングが良いというか、タイミングが悪いというか、何度も何度も邪魔されているオットーの姿は、シビアな状況なのに観ていて何だか可笑しくなる。

まさにラテン系の陽気さで、機転が利いて相手の心に入り込むのが上手なマリソルといつしか友情みたいなものが芽生え、もう一度生きる希望を見つけていくオットーの姿に、笑いあり、涙ありの感動で胸がいっぱいになる作品だった。

愛妻との出会いなど昔の回想の中で、オットーの若い頃を演じたのは、俳優として初作品のトルーマン・ハンクス。彼はトム・ハンクスとリタ・ウィルソンの息子。リタ・ウィルソンはこの作品のプロデューサーであり、挿入歌「Til You're Home」をコロンビア歌手セバスチャン・ヤトラとデュエットしているのもリタ・ウィルソンというから、家族総出で盛り上げている作品。

そんな中でも、メキシコではコメディ女優として有名だというマリソル役のリアナ・トレビーニョが英語とスペイン語をちゃんぽんで早口に話す姿など、動作ひとつひとつが何とも愛らしくて魅力的だった。

そして野良猫ちゃんの演技?もマリソルに負けないくらい可愛い。

「幸せなひとりぼっち」というスウェーデンの作品のリメイクらしいが、やっぱり原作名だけあって、タイトルとしては「オットーという男」よりそっちの方がぴったりのような気がした。オットーという人は、ひとりぼっちで孤独だったけど、最後はとても幸せになれたのだから。
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