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それでも私は生きていくのらのレビュー・感想・評価

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)
3.6
父の病への不安と悲しみ、恋の喜び。悪い出来事と良い出来事が同時並行的に起こり、複数の役割を同時に担わなければならないのが人生というものだ。35ミリフィルムを用いて撮影された映像はそうした悲喜交々をナチュラルに、それでいて美しく映画的にとらえている。監督自身の言葉を借りると「少し距離を感じさせ、それでいて共感を抱かせる」映像だ。

誘惑的な面を削ぎ落とされたレア・セドゥがかえって神秘性を帯びているように見え、作品を特別パワフルなものにしている。「本人よりも本を見るほうがパパを感じる。それぞれの本に色があって、合わせるとパパの肖像画になるの」というセリフが今の自分に切実に響いた。
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