Habby中野

シャドウプレイ 完全版のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

シャドウプレイ 完全版(2018年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

圧倒的。サスペンスの導入とこの街の薄暗さと靄の濃さの表現とが入り混じった秀逸な冒頭から始まり、この城中村の全てを表すドローンショット、そのドローンが地に降り立つ際のまるで天使か、あるいは悪魔のような動き、過呼吸的なテンポで切り刻まれ観客の理解ではなく意識を引き摺り回す速さ、密度、暗さ、爆発─コスモスの皮を被った世界のカオスが露呈していく。その混沌の中起こった事件は、その発端が今そこではなく過去にあることを示す。中国の発展と政策、その膿が一つの殺人にきれいにトレースされ矮小化され、探偵は(職は警察だが)そのエネルギーに不可抗力的に─ではなく少し滑稽に、巻き込まれていく。『氷の涯』を彷彿とさせるパラノイアの雰囲気と、しかし事実起こった事件。終始陰謀と勘繰りと誤読とグチャグチャとが渦を巻く。自暴自棄かと思うほどの何も見えない暗い画面に速すぎるカット。シームレスな時間接続。それはそこで起きているつぶさなことではなくこの見えなさそのものが起きているのだと言っているようだ。
事件の顛末に意外さはあまりないが、エンドロールにやられた。映画の場面カットやスチルと、当時の実際の写真が並列に並べられていく。悲劇だけでなく生々しさや懐かしさのような手触りが溢れていた。作りものではなくてこのカオスは実在していた。そして今もそれは続いている。
しかしまさか二日続けて同じ構図の映画を見ることになるとは思ってもみなかったな。
Habby中野

Habby中野