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ソフト/クワイエットのmakoのレビュー・感想・評価

ソフト/クワイエット(2022年製作の映画)
4.0
《それは、しずかで、やさしい“怪物”》
◎80点

監督・脚本: ベス・デ・アラウージョ。(長編デビュー)

『ゲットアウト』『セッション』のブラムハウス作品。

監督のコメント(公式HPより)。
私が脚本を書き始めたのは、エイミー・クーパーのビデオが出回った日の翌日でした。エイミー・クーパーとは、セントラル・パークでバードウォッチングを楽しんでいた黒人男性に脅されたと嘘をついて、警察に通報した女性です。

本作は実話をモチーフにした作品で、90分ワンショット、リアルタイム・スリラーになっています。

主人公は幼稚園に勤めるエミリー。『アーリア人団結をめざす娘たち』という白人至上主義のグループを結成する。教会での会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。
多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。

エミリーは一見すると優しく良い先生に見えるけど、冒頭に出てきた、幼稚園の清掃員(有色人種)には厳しく冷たい。
そんなエミリーが主催する会での会話も偏見と差別的発言が多くクラクラした。
よくこんな会を教会でできたなと思ったら、案の定神父から退去を迫られ出ていくことに。
まだ話し足りない4人はエミリーの家で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹と口論が始まり、ここから最悪な展開に。

内輪でワイワイやってる内はいいものの、アジア系姉妹が登場してからは4人のテンションが上がり、怖かった。気が大きくなっているのか暴言を吐きまくるレスリーやキム、マージョリーも煽りまくる。それに同調しエミリーも応戦する。
姉妹のアンとリリーは反論するが話にならないのでワインの代金を払い店を出ていく。

ここで止まればよかったのに。
エミリーの夫も(教会の後で合流)一旦は止めたのに、レスリーは聞く耳持たず。
エミリーはレスリーに、ここで引き下がっていいのかと詰め寄られ、他の2人も賛同し、何を思ったのか4人で姉妹の家に乗り込むことに。
夫はここでも止めたが姉妹の家に送ることに。

自分達は正しいと思い込こむ狂気。段々とタガが外れていく4人の行動にハラハラし、目が離せない。
でもレスリー以外は事の重大さに気づき始め、内心では辞めたいと思っているがレスリーが圧をかけ辞めさせない。そうなるともう進むしかなくなる。
先が見えなくなるってこういう事なんだろうなと思った。
観てる私は、バカバカ、やり過ぎだよ!って分かるのに。

後半は怒涛の展開で、巻き込まれた姉妹が可哀想でならなかった。
姉妹に対し、もはや拷問のような仕打ちがエグかった。
直接的な描写はなかったけど、想像するだけで恐ろしかった。

1人ならここまでやらなかっただろう。集団心理の怖さも思い知った。
先日、『福田村事件』を鑑賞したけどそこでも集団心理の怖さが描かれていたなと、書きながら思い出しました。

きっかけは些細な事だったのに、起こってしまった事は取り返しがつかない事に。

都合良すぎる部分もあるけど、よく出来ていると思いました。
本作は、わずか4日間のリハーサルで撮られたそうです。
緊張感、緊迫感、焦燥感等、生々しかった。
一見の価値あり。
圧倒されました。

タイトルは劇中のエミリーの台詞で語られます。


日本語字幕: 永井歌子
観客 1階席 1人、2階席 1人
劇場鑑賞数 #86
2023鑑賞数 #96
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