このレビューはネタバレを含みます
すごくよかったけどこの気持ちを人に説明するのはとても難しい。ともかく私は好きな話でした。絶対原作読もう。
榊さんは大人っぽいけど中身はすごく子供だと思う。大人が大人として接したら榊さんの怒りや寂しさはきっと表に現れない。だからこそ彼女には直達みたいにひたむきでピュアな男の子が必要だったのだと思う。
その直達は鈍感で逞しくて、何ひとつ諦めることなく手に入れようとする大胆さがある。大人になると失ってしまうものをたくさん持っていて、情けないことに高校生に嫉妬してしまいました。
カツアゲという怒りの表現もとてもチャーミングだった。お金で解決するというのはある意味では優しさのようにも思える。
「水は海に向かって流れる」というタイトルは絶え間ない運動を表しているのかもしれない。人間は変わり続ける生き物だと思う。榊さんはきっとこれから素敵な恋をするし、直達くんは手に入らないものがあるということを知ると思う。
榊さんの怒りを「覚えておく」と言った直達くんは、「変わり続ける」という本質をわかっていたのかもしれない。だからこそ、この瞬間のスナップを大切に保管しておこうと思った。
その上で、直達が榊さんを止めに行くラストはたまらない気持ちになる。いまこの瞬間だけは永遠を信じてみたい。必然の流れに逆らってみたい。そんな幼稚な抵抗にわたしはとても弱い。Galileo Galileiの「恋の寿命」が脳内再生されました。
榊さんと直達の話ばかりしてしまったけど、映画のMVPは楓を演じた當間あみさんに差し上げたい。「このハート泥棒!」のくだりは日本語ってなんて素敵なんだと思いました。
クライマックスで榊さんに会いにいく直達を見守る柔らかい表情と、窓の格子に手を絡める仕草も良かった。愛情だなー
料理をするシーンがたくさんあるもの良いです。料理をすることは人を生かすということ。ご飯がつくれるうちはなんとかやっていける。そういうお話でもあったと思う。
海岸とスピッツの組み合わせは最強。たまらない気持ちになります。なにもかも放り出して海沿いでのんびり暮らしたいです。
2023年23本目