くう

怪物のくうのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.6
宣伝CMで、カンヌ上映後のインタビューを映し出したものがあって、「美しい映画です」と答えている人がいるのだけれど、序盤はそういう感覚で見ることは出来なかった。


「美しい」と心から思ったのは中盤に章が移って来てから。彼らが主役の物語になってからである。


本当に。なんという美しい子どもたち。


繰り返される「怪物だぁれだ」

怪物は結局、誰だったのか。


この子どもたちが、劇中の大人たちにならない世界が欲しい。この美しさを保ち続けられる世界が欲しい。


柊木陽太くんは、一昨年から連ドラ主要キャストの子ども時代を好演してきたモンスター子役。


この作品の中で、自由に、妖精のように走り回る。


黒川想矢くんには『誰も知らない』時代の柳楽優弥の雰囲気があり、ナイーブな少年を見事に表現。


美しい時代を生きる少年たちを美しい風景と共に、美しい坂本龍一氏の音楽をバックに流す。


しかし彼らの前途が「それでも生きていく」なのは、やはり坂元裕二脚本が作る闇なのだった。


名作。

他のユーザーの感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

家族観、男性性、異性愛が前提の小学校による無意識の加害。社会的な序列、同調圧力による無言の加害。ゴシップ、週刊誌による数の加害。虐待による物理的な加害。イジメ、視線の精神的な加害。いろんな形で存在し、常に脅威に晒されているし晒している。自覚はほぼない。会話、ギャグ、テレビ、標語に散りばめられている。仰るとおり、『映画作品だから、認知できている』という怖さが改めて浮き彫りになる。
気に障るなぁと反応をしたことも、されたことも星の数ほど思い当たる節があるので刺さりまくって辛い。過剰に敏感で、疎い。"何気ない"とか"普通"ってのはそいつの価値観に基づくものだろう。理解した気になるなよ。相手の立場になって考えてみる作業は必要だけど、厳密にはできるわけがない。
事実と真実。保利が湊を追いかけるシーンがまさにそのすれ違いを特段しっかり見せてくる。ただ釈明をしたいだけなのだが、不器用な性格や誤解がかえって大人の怖さを助長、特に目力に顕著に表れている。
最近見た『ライダーズ・オブ・ジャスティス』と通底するテーマ、やるせなさに因果を持たせたがる、矛先を向けたがる人間の性の卑しさ。納得がいくまで徹底的に交戦し、お互い憎悪が増幅していく。勝手に大人たちが暴れて、人間ってそういう生き物なんだよね、との諦めを経ての第三幕。"転生"するわけでなく、自分を他者を認めていき信じていき2人が2人だけで2人だけの世界を切り開いていく。ありのままでいることの祝福。唯一と言っていい、死んでいない目が交えているこの神々しいラストで物語を締めるのがなんとも粋。怪物の怖さの前編と、人間の素晴らしさの後編の対比構造。世界の変化を期待して。
伏線というか、色々なワードや行為が人々の都合の良い解釈で流れてきて変なところに着地をし、余計な飛び火を食らっていく様が、被害者になるし加害者になる、エネルギー保存的な美しさで素晴らしいと思った。
『お前たち落ち着けよ』と言わんばかりの優しいピアノの旋律。坂本龍一さん監修の109プレミアム新宿で見てきた。エンディング『Aqua』が素晴らしすぎる。
母親の第一声『星野くんのせい?』で信頼は地に落ちた。無闇矢鱈、憶測を言ったり断定したりかかりにくるウザったらしさに嫌気が差す。また自分に重ねる。
KateSaito

KateSaitoの感想・評価

3.9
カンヌ映画祭にて脚本賞、LGBTQ映画として日本映画で初めてカンヌ「クィア・パルム賞」を受賞㊗️
監督・是枝裕和 × 脚本・坂元裕二 そして坂本龍一の音楽。とても気になり早速観賞しました。

「怪物だーれだ?」の予告編通り
登場する誰もが怪物に見えてしまうホラー映画のような背筋が凍る戦慄を感じるが、個別で描かれる映像で段々とその正体が明かされていく。

坂本さんの音楽の物悲しい旋律が作品にとてもマッチしていることも素晴らしく印象に残りました🙆‍♀️🍀😡
L4zyCola

L4zyColaの感想・評価

4.5

このレビューはネタバレを含みます

"怪物"

映画館にて視聴
是枝監督作は「誰も知らない」のみレンタル視聴

エンドロール直前で号泣
かなりくらいました。是枝監督作は全部観ることをここに固く誓います。
想像力を掻き立てられながら二転三転と変わっていく展開に引き込まれる。社会問題や物事を一面から捉えることへの批判が軸におかれているのだろうなと感じた。生まれ変わりなどできない。誰でも手に入れられるものしか幸せと言えない。あの2人が生まれ変わって幸せになって欲しいなんて所詮僕の理想妄想でしかない。とにかく皮肉の効いた2023邦画大傑作でした。


誰かが悪役であると決めつけていた僕自身が、
私たちが一番の怪物だった

怪物だーr
おれぇぇええ!!



皆様の考察拝見致します

2023-90本目
ま

まの感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

「そんなの、しょうもない。誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。しょうもないしょうもない。誰でも手に入るものを幸せって言うの」

この台詞、何度も噛み砕いて考えてみたけどわたしは理解できているようで理解できていない。
それでもわたしはしょうもない幸せを求めて生きてしまう愚かな人間なのだと思います。
mito

mitoの感想・評価

3.8
2023年66本目。
是枝裕和監督最新作。
カンヌでの脚本賞受賞も記憶に新しい本作。

登場人物のそれぞれの視点で1つの出来事を見守る事で、事件の真実が分かっていくタイプの映画。

やっぱり、是枝監督は登場人物を突っ撥ねるタイプの映画の方が良い。
是枝監督って結構、厳しい現実を描く割に希望的観測をする描写を多用して絶望感を感じさせない構成を好む傾向にあるけど、その気が強い作品は余り肌に合わない。
何か非現実的に見えちゃう。
「誰も知らない」なんてその筆頭で、リアリティを求めた映画かと思いきや、突然ファンタジーのような非現実的な展開の連続で「そうはならんやろ」と思ってしまう。

この作品は大分、登場人物に対して、救いを与えない方向に調整されていて悪くなかった。
後半、「準備しよう」〜廃電車の秘密基地の件は若干ファンタジーに寄りかけたのでハラハラした。

噂や偏見で勝手に広がっていく人々の評判。
そんなリンチのような状況を恐れ、事実を隠し、マイノリティであることをひた隠しにする。
そんな苦悩を多面的な視点で描けている。
監督が「LGBTQに特化した作品ではない」と語った通り、その概念に縛られない普遍的な苦悩を主題にしたと捉えた方が楽しめる作品だと感じた。

恐らく、生きていたら、田中裕子さん演じる校長先生は樹木希林さんに演じさせたかったのだと思うのだが、にしても演技を樹木希林さんに寄せ過ぎでは。
実際、樹木希林さんが校長演じるのも、想像するとちょっとミスマッチな気もするし。
やけにそこが気になった。
何かに怒ってイライラしてでもその対象の側の立場に立ったときに全然違う世界の見え方がするっていう。だから何かを糾弾する前に一歩踏みとどまろうよ、という個人的な信条とも共感できてめちゃよかたです

このレビューはネタバレを含みます

かなり切ってるのか分からないけど構成がすごくすごく上手いことが上手過ぎるところまでいってしまって少し冷める。現代の子供を中心にして羅生門というか藪の中をやってみたという以上の何かがあるかと言われると難しい。

大人のパートがかなりステレオタイプで若干しんどかったのだが、子供パートは白眉。

堀先生を救った?音はグッときた。
何気ない一挙手一投足が誰かを傷つけたり蔑めたりすることもあるけれど、それと同じくらい背中を押してあげたり踏み出してはいけない一歩を止めてくれたりすることもある。さすが坂元裕二脚本。尊い。

最後に「Aqua」はズルすぎるな。自動で涙が出た。
mia

miaの感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

坂元裕二さんの脚本が好きで観に行った。
キャスティングはひとよを思い出したり、大豆田とわ子を思い出したり、いろいろ思い出したり、笑
大人たちもそれぞれが淡く、だけども濃く色を足していって綺麗に協調されてた。
子役の2人が本当に素晴らしかった。
凄すぎて絶望した。
秘密基地で転校することになったとよりくんが言うシーン、校長とみなとくんが楽器を吹くシーン、すごく好きだった。
楽器の音が怪獣の鳴き声みたいだった。
最初はたくさん勘違いした(させられた)けど、途中から丁寧に糸のほつれを解いていくようにその人物1人ひとりを噛み砕いていくような感覚だった。

いつもはここに感想を書かないけど、今日は久しぶりに書いてみたくなった。
それでも本当に上手く言語化出来なくて考えても考えても分からなくなる。
もう一回観たいなぁ、、。
帰りはぼんやり映画の余韻に浸りながら電車に向かう人たちに逆らいながら、月を見ながら歩いて帰った。
MGJ

MGJの感想・評価

5.0
悲しくて切なくてキレイだな。

少年期の輝きさながらに。

ラストが美しくも痛すぎてつらい。

泥をかき分ける手、見上げる光、結ばれない手と手。



「誰も知らない」を初めて見た時の痛みが、ここにもまた。

それは、個々が抱えたものではない、社会に根付く「傷み」。

それこそが…。
感情が大爆発して収束しないまま終わるので、観た後もずっと考えてしまって、思い出すだけで泣きたくなって、でも語る気にも感想を読む気にもなれなくて、ただとにかく良かったことだけを伝えたかったのでずっと敬遠してきたFilmarksをついにインストールしてしまった。何ということだ…
監督、脚本、音楽、映像、演技、全てが良かった。いまいち咀嚼しきれなかった部分もいくつかあるけど、全て解明したい気もするし、別に分からなくても良い気もしてる。
特に子役の2人が素晴らしかったです。少年の危うさを少年のまま表現してくれるのって本当にすごい、感謝しかない
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4.0

ギリギリで助かるとか、ギリギリで助からないとか、無情やら、復讐の痛みやら、アクションやらカッコ良さやら!!

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ああ本当に面白かった!

前作は観ず
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キャストの不気味さが適材適所。

窪田くん、ほんと、どんな物語に入っていても上手い。







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4.3

1923年、今からちょうど100年前。9月1日の関東大震災後に、「この国で」起きた虐殺事件をベースとした作品。

見終わってすぐには感想が書けなかった。思い出すと何度も泣きそうになる。言葉を失う。
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